2006年度上智大学シラバス

2005/12/24更新
◆倫理学特殊問題Ⅰ - (前)
川本 隆史
○科目サブタイトル
ケアの社会倫理学へ向かって
○講義概要
心理学者キャロル・ギリガンが話題作『もうひとつの声』(1982年)で「正義の倫理」と対置した「ケアの倫理」。これは「すべての人が他人から応えられ仲間に入れてもらえ、一人ぼっちで置き去りにされ傷つけられるような人はいない」状態を理想とするもので、葛藤状態にある複数の責任と人間関係のネットワークを重視し、「文脈を踏まえた物語的な思考様式」によって目前の苦しみの緩和を図ろうとする。本講義では、ギリガンの問題提起を受けて始まった「正義vsケア」論争を手がかりにしながら、両者の統合を心理的な成熟目標に定めるのではなく、正義を「正しい・まともな」という形容詞に差し戻すことによって、「まともなケア」あるいは「ケアの正しい分かち合い」をサポートする諸制度を構想する理路を探りたいと思う。可能な限り、日本の医療、教育、福祉の諸制度の検討も織り込むつもりである。
○評価方法
出席状況(10%)、授業参画(10%)、レポート(80%)
○テキスト
川本隆史編『ケアの社会倫理学――医療・看護・介護・教育をつなぐ』(有斐閣、2005年、ISBN4-641-28097-5)
○参考書
川本隆史『現代倫理学の冒険――社会理論のネットワーキングへ』(創文社1995年)
同編岩波新・哲学講義⑥『共に生きる』(岩波書店1998年)
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1初回に聴講者の履修の意図や問題意識をフランクに語ってもらい、担当者による導入を経て、テキストの希望の章をグループ(ないし個人)で担当・報告してもらう。ゼミ方式で進め、適宜映像資料も用いたい。

  

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