2005年度上智大学シラバス

◆計量経済学 - (前)
出島敬久
○科目サブタイトル
経済モデルの推定・検定と,それを用いた予測の方法
○講義概要
経済学で学ぶような理論モデルは,どこまで現実を説明できるだろうか,また将来を予測できるだろうか。

たとえば,所得の変動はどの程度消費に影響するのか,ある企業の株価は,どの程度市場の平均と連動するのだろうか。こうした分析は,企業や政府の戦略・政策の立案や,資産運用のような局面でも役に立つだろう。

それには,現実の経済データを用いて,モデルを推定し,ある仮説が正しいのか検定する作業が必要になる。その手法を体系化したものが計量経済学である。この講義では,計量経済学の基礎的な手法である最小2乗法とその望ましさ,その限界と拡張について,解説し実習する。
○評価方法
前期学期末試験(定期試験期間中)(100%)
期末試験は教科書の章末問題の類題になる。この分野の理解には,経済学科が入学試験で課している程度の高校数学力(数学II,A,B程度)を要する。具体的には,連立方程式が解けること,微分ができること,数列の和について計算ができることである。
なお,確率分布に関する知識(とくに確率変数の和の分布)があると理解は容易になるが,講義でも復習する。
受講者数が少なければ,宿題やレポートを評価対象に加えることがある。
○テキスト
浅野皙・中村二朗『計量経済学』 有斐閣,2000
○参考書
G.S.マダラ,和合肇(訳)『計量経済分析の方法(第2版)』CAP出版
和合肇・伴金美『TSPによる経済データの分析(第2版)』東京大学出版会,1995
○必要な外国語
なし
○他学部・他学科生の受講

○ホームページURL
http://pweb.sophia.ac.jp/~t-dejima/
○授業計画
1計量経済学の役割:経済モデルの推定・検定は何の役に立つか
2計量経済分析の手順:モデルの構築・データの収集・仮説検定・モデル診断・予測
3統計学の復習1:確率変数の期待値と分散,よく使われる確率分布
4統計学の復習2:確率変数の和とその標本分布の性質
5統計学の復習3:標本平均と推定量の望ましさ:不偏性・効率性・一致性
6統計学の復習4:検定の考え方:帰無仮説の設定と棄却
7単回帰での基礎1:条件付期待値と最小2乗法のアイディア
8単回帰での基礎2:単回帰モデルと最小2乗法の計算の実際
9単回帰での基礎3:あてはまりの尺度としての決定係数
10単回帰での基礎4:誤差項の性質と回帰係数の推定量の確率分布
11単回帰での基礎5:最小2乗法の望ましさ-ガウス・マルコフ定理
12単回帰での基礎6:回帰係数についての検定:t検定
13単回帰での基礎7:予測値とその期待値・分散・信頼区間
14単回帰での基礎8:残差の性質の検討
15重回帰モデルへの拡張1:最小2乗法の行列表現と正規方程式
16重回帰モデルへの拡張2:射影としての最小2乗法と直交条件としての正規方程式
17重回帰モデルへの拡張3:残差回帰という解釈
18重回帰モデルへの拡張4:決定係数の意味づけと分散分解
19重回帰モデルへの拡張5:最小2乗推定量の分布とその性質
20重回帰の回帰係数に関する仮説検定1:t検定
21重回帰の回帰係数に関する仮説検定2:F検定
22重回帰における回帰係数に関する仮説検定3:残差平方和の利用
23重回帰における最小2乗法の望ましさ:ガウス・マルコフ定理の概要
24重回帰モデルの実際1:他の変数をコントロールする
25重回帰モデルの実際2:構造変化の検証とダミー変数の利用
26重回帰モデルの実際3:共通トレンドとみせかけの回帰
27重回帰モデルの実際4:さまざまな制約条件に関する検定
28重回帰モデルの進展1:定式化の誤りの影響:過少定式化と過剰定式化の影響
29重回帰モデルの発展2:多重共線性とその対応
30重回帰モデルの進展3:不均一分散と一般化最小2乗法

  

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