2005年度上智大学シラバス

◆法律学特殊講義Ⅰ (教育法) - (後)
森田 明
○講義概要
神戸「酒鬼薔薇」事件(1997年5月)を契機に<保護か刑罰か>という少年法をめぐる論議が国民的規模で巻き起こり、第150回国会(2000年11月)は「改正少年法案」を通過させた。だが、すぐれて今日的トピックに見えるこの議論は、そのルーツを探ってゆくと、明治末年以降の長い論争史の一端に他ならないことが明らかになる。また「なぜ少年法なのか」という問いから出発して、視野を欧米の児童法制全体に拡げてみると、<子どもと法>という主題が、19世紀後半に始まった「家族の崩壊」という近代社会の構造変化とともに登場した極めてスリリングな問題であることが明らかになる。このような課題意識の下に、(1)わが国の少年法制の歴史的展開 (2)「子どもの権利が意味するものは何か? という2つのテーマを中心として講義を行う。(家裁調査官試験受験希望者に対しては個別のガイダンスを行う。)
○評価方法
学期末試験1本
○テキスト
森田明『未成年者保護法と現代社会―保護と自律のあいだ』 有斐閣
○参考書
土居健郎『甘えの構造』弘文堂
ハンス・マイアー『基本人間論』信山社
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1はじめに―問題の所在
2わが国における少年法の成立・展開とアメリカ法
3大正少年法の起草過程
4大正少年法の審議過程―保護とデュープロセス
5大正少年法の構造と運用(1)
6大正少年法の構造と運用(2)
7GHQ占領と昭和少年法の制定過程
8昭和少年法と「少年法改正論争」
9少年法改正問題の歴史的位置―保護と責任
10アメリカにおける家族の崩壊と児童法の歴史的展開
11「子どもの権利」の二つの局面―保護と自律
12児童の権利条約の審議過程
13児童の権利条約の展開過程
14むすび―保護と自律のあいだ

  

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