2005年度上智大学シラバス

◆環境リスクマネージメントⅠ - (前)
中杉 修身
○科目サブタイトル
化学物質のリスクマネージメント
○講義概要
化学物質リスクは社会的な関心の高い問題である。化学物質の曝露は多様な形態で発生し、化学物質リスクを抑制するには、多様な手段を組み合わせて化学物質を総合的に管理することが必要となっている。本講義では、流れに沿った複層的なリスク管理が必要であること、これまでの規制を中心としたリスク管理に事業者による自主管理を組み合わせた複合的な管理が必要であること、リスク管理の目標とするレベルは、社会の合意に基づいて決められるべきであり、そのためにはリスクコミュニケーションが重要な役割を果たすことを説明するとともに、そのための技術や手法の現況について解説する。
○評価方法
出席状況(20%)、授業参画(20%)、前期学期末試験(授業期間中)(60%)
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1化学物質汚染の歴史とその汚染の特徴について概説する。詳細については、「化学と環境」の授業の中で解説する。
2化学物質汚染がもたらすリスクの現状について解説する。詳細については、「化学と環境」の授業の中で解説する。
3リスクの発見から対策の実施、事後監視による対策効果の確認と言ったリスク管理の流れについて解説するとともに、製造・使用・発生の抑制から排出抑制、環境浄化、さらには曝露防止に至るリスク管理の体系について説明する。
4化学物質の製造・使用を抑制したり、非意図的な生成源となる人間活動を制限すれば、化学物質リスクを元から断つことができる。化審法、農薬取締法など、わが国での制度を欧米諸国や国際機関での議論を踏まえて整理し、解説する。
5私たちの生活を維持して行くには、有害な化学物質でも有用なものは環境への排出を抑制しながら使用せざるを得ない。大防法、水濁法、廃棄物処理法、ダイオキシン類対策法などの排出規制によるリスク管理制度について解説する。
6予防的な取り組みへの遅れに対応するために導入された事業者の自主管理を促す制度について紹介する。PRTR制度を始めとして、制度の内容について紹介を行うとともに、現状での対策効果の分析を行う。
7環境中に残留する汚染の浄化を求める法制度について解説する。農用地土壌汚染対策法、土壌法、水濁法、ダイオキシン対策法などにおける仕組みの特徴について解説するとともに、現状での対策効果の分析を行う。
8化学物質リスク管理のための国際的な動きについて解説する。オゾン層保護、POPs、有害廃棄物越境移動、海洋投入処分など、国際条約の状況とそれに対応した国内での取り組みを紹介する。
9化学物質モニタリングの現状について紹介する。大気、公共用水域などの常時監視、土壌や底質などの汚染の点検など、目的に応じたモニタリングの仕組みについて解説する。また、モニタリング技術の動向についても解説する。
10化学物質の排出抑制方法の現状について解説する。化学物質の性状に対応して排ガス、排水や廃棄物の処理技術を紹介する。また、装置の改良や代替物質への転換など、生産方法の見直し技術の動向についても解説する。
11汚染された土壌、底質等の浄化技術について、実際に浄化事例の紹介をまじえながら解説する。また、土壌・地下水中に高濃度で存在する汚染物質を見つける方法についても解説する。
12リスク管理に社会的な合意を取り付けるために重要となるリスクコミュニケーションについて解説する。一般的なリスクコミュニケーションと紛争時のリスクコミュニケーションに分けて解説する。
13試験。授業の進み具合によっては、講義を行い、試験は定期試験期間中に実施する。

  

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