第18回 輝くソフィアンインタビュー 渡邉 茂樹さん

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第18回 輝くソフィアンインタビュー 渡邉 茂樹さん

2014.03.31

上智の自由で国際的な空気が 自分らしい生き方へ導いてくれました 渡邉茂樹さん フリーランス・フォトグラファー 1995年卒業(法学部・国際関係法学科)

渡邉茂樹さん フリーランス・フォトグラファー
1995年卒業(法学部・国際関係法学科)

渡邉茂樹さん
1年かけて四谷キャンパスを撮影
母校だからこそ難しかった構図選び

創立100周年を迎えた上智大学と、四谷の100年間を振り返る「東京人12月増刊号『上智大学と四谷界隈の100年』」(都市出版)が、2013年11月8日より全国で発売されています。私はその雑誌の全編にわたる撮影を担当。約1年かけて、学校行事や雪の日など、大学の特別な日の表情や上智を卒業した著名人などを撮影しました。フォトグラファーとして、再び母校に関われたことをとても光栄に感じています。

大学関係の撮影は初めてではありませんでしたが、母校を撮るのは思いのほか難しかったです。というのも、大学の風景に慣れ親しんでいるから、どこを見ても目新しさを感じられないのですね。それに、大学パンフレットで使われているような、既視感の強い写真を撮るのも嫌だったんです。たとえば一号館の写真は上智を象徴する魅力的なものですが、私はそれを超える構図を見つけたいと思いました。表紙の撮影では大学のグラウンドまで含めて全体を一望できるような、とっておきの場所を探して歩き回りました。実際に使われた表紙の写真はきっと卒業生でも目にしたことのない景色のはず。新鮮な印象を抱いていただけると嬉しいです。

今回は、上智にまつわる様々な仕事をさせていただきましたが、普段は女性誌などの撮影や、一般企業の広報など幅広く活動しています。政治家から一般の方まで、この仕事をしていなければ出会えないような方々の「生の声」を聞けることが、私にとって一番の喜びです。

夢はUNEP勤務からフォトグラファーへ
会社員時代も諦められなかった想い

実は、私がフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせたのは30歳を超えてからです。高校時代にオゾン層破壊などの環境問題に興味を持ち、国連環境計画(UNEP:ユネップ)で働きたいと考えていました。上智の国際関係法学科に入学したのはそのためです。しかしながら、もっぱら競技スキーサークルや英会話サークルの活動に熱を入れてばかりで、勉強熱心な学生ではありませんでした。それでも、国際機関の実態を知ることができた「国際機構論」や、『夜と霧』などの名著に触れた「文学における生の哲学」、プレゼンテーションを学んだ「人間学」などの授業は、今も記憶に残っています。

モンタナ大学交換留学中、クラスメートたちと

4年次には交換留学生としてモンタナ大学に1年間留学。ルームメイトが持っていた『NATIONAL GEOGRAPHIC』という雑誌に影響され、フォトグラファーを志すようになりました。随所に使われている美しい写真に感激しましたし、「こういう仕事もいいな」と感じたんです。それで卒業後の進路は漠然とマスコミを志望したのですが、留学を終えて帰国したころには採用試験は終わっていました。結局、内定した大手メーカーで勤めたのですが、気持ちがフワフワして落ち着かず1年足らずで退社。転職後、ケーブルテレビへの販促営業を経て、映像ソフトの製作・配給事業を行う会社で国際法務を担当しました。どの職場でもベストを尽くしてきましたが「写真を撮りたい」という想いは消えませんでした。

ひとまず来たバスに飛び乗ってみる
目的地への道のりは最短でなくていい

転機が訪れたのは2000年。雑誌『東京人』で活躍していた渡部さとるさんの写真集の末尾にメールアドレスが記載されていたので、「アシスタントにしてもらえないでしょうか」というメッセージを送ったのです。幸運にも返事があり、撮りためた作品を持ち込んだのですが、それは全く評価されず…。でも、カメラアシスタントには荷物を運ぶ体力が不可欠なので、そこを見込まれて採用されることに。何はともあれ、自分としてはようやくスタートラインに立てた喜びで一杯でした。親には「なんで今さら、そんな水商売みたいな仕事を…」と泣かれてしまいましたけど。

このように私は、上智大学で学び、留学し、いわゆる大手企業にも勤めた後、写真の世界に入ったので、道のりとしてはかなり遠回りをしています。でも無駄な経験は何一つありませんでした。例えば、英語が話せるフォトグラファーとして重宝されることもあるし、大学や一般企業を経験しているからこそ見えてくる面もあります。ときには上智の同級生や、前職の同僚と一緒に仕事をすることもあるんです。

だから私と同じように大学を卒業後、やりたいことにたどり着けずにいる人がいたら、「とりあえず、来たバスに乗ってみることが大事だよ」と伝えたいです。次のバスが来るまで待つのもいいけれど、自分の都合でバスが動いてくれるわけではありません。「エイッ!」と乗ってしまえば、見たことのない景色に出会えるかもしれない。目的地まで最短で行けなかったからこそ、得ることができた経験や知識、出会いもあるわけで、いつかそれがその人の強みになる。私はそう信じています。


  • 『東京人』巻頭見開きの写真

  • 好評発売中の『東京人』12月増刊号
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渡邉茂樹さん プロフィール

1995年 上智大学法学部国際関係法学科 卒業
1995年 大手メーカーに就職
1996年 株式会社スター・チャンネルに入社
1998年 株式会社東北新社に転籍
2001年 写真家渡部さとる氏に師事
2003年 株式会社学研パブリッシング 写真部に所属
2005年 フリーランス・フォトグラファーとして活動開始
大学卒業後、メーカー勤務を経て株式会社スター・チャンネルに入社。約1年半、販促活動を経験し東北新社へ転籍。合弁会社設立に関わる国際法務を担当。2001年より写真家の渡部さとる氏に師事。独立後は『東京人』『日経WOMAN』『週刊ポスト』などの雑誌や書籍、海外媒体にてひと、まち、食の撮影の仕事を中心に活動している。


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