第11回 あの人に会いたい

Veritas

第11回 ハビエル・ガラルダ/Javier Garralda先生 元上智社会福祉専門学校長

2014.02.17

上智が蒔いた「種」を自らの力で実らせてほしい ハビエル・ガラルダ先生 (元上智社会福祉専門学校長)

ハビエル・ガラルダ先生 (元上智社会福祉専門学校長)

教員として、聖職者として、人生の喜びについて
説かれてきたガラルダ先生。その教えは今もなお、
上智を巣立った多くの卒業生のなかで生き続けています。

ハビエル・ガラルダ先生
教育に身を捧げた40年
寮での日々は心のふるさと

 四谷キャンパスに隣接する聖イグナチオ教会。大きな天井窓から自然光が柔らかく差し込み、静穏な時間が流れる。ここでの挙式を望むカップルは5カ月にわたり教会が開講する「結婚準備講座」で学び、心豊かな結婚生活を送るための準備を行うのが決まりである。上智大学文学部教授を退任後、聖イグナチオ教会の助任司祭に着任されたハビエル・ガラルダ先生が、結婚準備講座を担当するようになったのは2002年のこと。愛すること、人生の喜びについて説き、数多くの夫婦を新たなステージへと後押しされてきた。

 「私が担当した夫婦には上智の卒業生も多いですよ。教会で行われるミサやクリスマスパーティには、ここで結婚した卒業生がよく子どもたちを連れて顔を見せてくれます。彼らの成長は何よりの喜びですね」。そう話しながら目を細める。

 ガラルダ先生がイエズス会の一員として初めて来日したのは1958年。1960年に上智大学外国語学部スペイン語学科で教鞭を執った後、文学部総合コース研究室(現人間学研究室)へ移り、退任まで40余年にわたる教員生活の大半を上智の学び舎で過ごされてきた。

 「30代のころはイエズス会の男子寮「三木ハイム」やキャンパス内にあった「上智大学男子寮」の舎監もしていました。懐かしい思い出です。「三木ハイム」は、ひとつの寮にいろいろな大学の学生が暮らしていたんですよ。東大、早稲田、慶応、上智……。みんな個性があって、いい子たちばかりでした。毎日、寮生が私の部屋へ来て、その日大学であったことを話してくれるのが楽しみでね。彼らとは今でも時々会っていて、家族のような存在です」。学生たちと日々語り合い、寝食をともにした寮生活は、今も折にふれて思い出す「心のふるさと」だという。


結婚感謝ミサでは、結婚式で誓い合った言葉を繰りかえし、初心に帰ることを願い合う。

スタディツアーから生まれた
国際支援団体と交流の輪

 1981年、上智社会福祉専門学校の校長時代に始めたフィリピンでのスタディツアーは、今やガラルダ先生のライフワークともいえる活動だ。現在は専門学校生に加え、上智大学・短期大学部の学生もツアーに参加しており、これまでにのべ約800人がマニラやセブの地で奉仕活動を行ってきた。

 「現地では貧しい子どもたちが住むスラム街でホームステイをさせてもらいます。家庭に滞在し、一緒にご飯を食べたり遊んだり寝たりして肌で感じた現地の生活は、教科書やテレビで知るそれとは大きく違う。はじめはショックを受ける学生もいますが、その経験が大切。現教皇フランシスコの説教に『羊の匂いのする羊飼いでありなさい』という言葉があります。よい羊飼いであるためには、カメラで羊を監視するのではなく、匂いがつくほど群れの中に入り込んで、真の姿を身をもって知らなければいけないということ。私たちは日本という帰る場所がありますから本当の意味で『羊くさく』はなれませんが、それでもこのツアーを通して学生たちの考えや行いに変化があるようです」

 先生の言葉どおり、現地に身を投じた経験は、学生の自発的なチャレンジへとつながった。国際交流や支援を目的とした団体が次々と立ち上がったのである。その内容は、物資・食料支援、教育普及、子育て支援、スタディツアーの企画・開催など広がりを見せ、現在は、「ハロハロの会ネットワーク」として各団体が連携をとりながら、精力的な活動を続けている。


フィリピンでのスタディツアー。現地の方と関わり合いながら、得がたい経験を積んでいく。
後進の活躍が教えてくれる
上智の教えが実を結ぶとき

 「以前、私がかつて教えた卒業生の勤務先に強盗が押し入ったそうです。彼はその場に居合わせていて、身を挺して犯人と渡り合ったと新聞に掲載されていました。その彼が言うのです。『僕は上智で“種”をもらいました。それは自分次第でいつか実になるものです』と」。そして、こう続けた――「主よ、私が蒔くあなたの種を実らせてください」。ガラルダ先生の祈りは、上智で学んだすべての人に向けたメッセージだ。

 助任司祭としての毎日は多忙をきわめる。教会でのミサや説教のほか、公開講座と聖書研究会が週に3回ずつ。結婚を切り口に、愛、信頼、コミュニケーションなどについて学び、人生を考える先生の講座は人気が高い。また教誨師として、府中刑務所、東京拘置所でのミサや個人面談も20年近く続けている。最近では、自身の研究分野である人間学、倫理学について一般向けに優しく綴った著書4冊をまとめなおし、そこに新しい気づきや問いかけを加えた新書を執筆中だ。

 今年で83歳。いつまでも若々しいガラルダ先生にそのパワーの源は何かうかがうと、「赤ワインと食事です(笑)」と笑顔で教えてくれた。「今朝は納豆とさんまをいただいてきました。日本に来て長いですからね、和食は大好きになりました。食べものを美味しくいただいていれば、健康で、たくさん仕事ができる。そして仕事を通したさまざまな出会いが、いつも私に力を与えてくれるのです」。

 
ハビエル・ガラルダ/Javier Garralda先生 プロフィール
ハビエル・ガラルダ先生

上智大学名誉教授、聖イグナチオ教会助任司祭。
1948年イエズス会トレド管区アランフェス修道院へ入会後、58年に初来日。
上智大学外国語学部スペイン語学科、文学部で講師を務め、71年より文学部助教授。79年同教授。
77~85年には上智社会福祉専門学校の校長に就任。
88年~92年人間学研究室長。
2002年に退任し、同年に名誉教授となる。


◇ハビエル・ガラルダ神父ホームページ
  http://www.jesuits.or.jp/~j_garralda/




前の記事次の記事