2006年度上智大学シラバス

2006/03/06更新
◆労働経済学Ⅰ - (前)
出島 敬久
○科目サブタイトル
雇用と賃金・教育訓練に関する経済分析
○講義概要
労働経済学は,雇用や賃金の動向やその効率性について,従業員や企業の合理的な選択(経済合理性)をもとに考える学問である。近年の日本企業では,有期契約や派遣労働者といった非正規雇用者が増加している一方,年功賃金から従業員の業績を反映した成果主義賃金への移行が進んできた。この変化は,旧来の終身雇用や年功賃金体系では,雇用調整も賃金調整も緩慢で,長期にわたる財需要の減退に対応できなかったことによる。しかし,この状況は,団塊の世代の退職と少子化の進行がもたらす労働供給の持続的な減少によって,再び反転するだろう。働き方や労働条件は,労働需要と労働供給の動向次第で大きく変化し,世代や雇用形態に応じて経済厚生に格差が生じることを説明する。
○評価方法
前期学期末試験(定期試験期間中)(100%)
受講者数が少なければ,宿題やレポートを評価の対象とすることもある。
○テキスト
中馬宏之・樋口美雄『労働経済学』 岩波書店,1997
○必要な外国語
特になし
○他学部・他学科生の受講
可 (ただし,ミクロ経済学の基礎を前提として説明をする。)
○ホームページURL
http://pweb.sophia.ac.jp/~t-dejima/
○授業計画
1働き方の分析になぜ経済学が必要か-最適な雇用量は賃金と生産性の関係で決まる-
2人はどれだけ働こうとするか―労働供給の決まり方
3女性の賃金と子供数がなぜ関係するのか-労働供給と家計内生産
4企業はどれだけ人を雇えばよいか―労働需要の決まり方
5財の需要が変わると労働需要はどれだけ変動するか―マーシャルの派生需要の法則
6雇用量や賃金はどのように調整されるのか-経済合理的な労働保蔵と法的な制約(解雇権濫用の法理)
7誰が失業し,誰がニートになるのか-失業の構造と求職意欲喪失効果
8人はどれだけ教育を受けようとするか―人的投資としての教育需要と教育の内部収益率
9教育訓練費用は誰が負担するのが効率的か―一般的技能と企業特殊的技能の費用負担の違い
10勉強したくない学生も大学へ進学するのはなぜか―シグナリング(能力顕示)のための教育需要
11人の能力が判らないとき,生産性の低い人ほど有利になる(逆選択)のをどう防ぐか
12出身学校や保有資格で採否を決めるのは合理的か―シグナリング・統計的差別の経済合理性とその限界
13なぜ勤続年数とともに賃金が上がるのか―人的投資の成果と後払い賃金のインセンティブ

  

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