2006年度上智大学シラバス

2006/02/24更新
◆訴訟実務基礎(民事) - (前)
裁判官派遣教員(足立 謙三),未定
○講義概要
 民事訴訟の実務を学ぶ上では,①法的な主張として当事者が何を主張すれば良いかという要件事実論に加えて,②訴訟手続をどのように運営していくかという手続の運営,判断の基礎となる事実の認定をどのようにするかという事実認定の3つが重要であり,その基本的事項に関する考え方を理解し,習得することが不可欠である。その際には,実体法や手続法における理論,解釈をふまえて,それがどのように実務に反映しているか,あるいは実務がどのように理論に影響を与えているかを理解できる力をつけることが重要であり,それにより実体法や手続法における理論と実務との架橋を図ることが可能となる。
(小林秀之講師)授業は、理論的な色彩が強い部分について,実務にも通じた民事法の研究者としての立場から,初回の導入部分について担当する。
(足立謙三講師)実務的な色彩が強いため、2回目以降を担当する。授業は、要件事実について当事者の言い分による基本的事例を題材にし,手続の流れに関してビデオ等を利用し,事実認定については別途教材等を使用して,基礎的な事項に関する考え方の習得を図る。授業は講義形式で行うが、随時質問する等して行う。
○評価方法
 期末の試験を中心とするが,学期の中間と後半(事実認定関係)における課題の評価を平常点に加味して総合評価する。なお,授業中の報告や問題演習の解答等を考慮することもある。
○テキスト
司法研修所編『問題研究要件事実―言い分方式による設例15題』 (法曹会)
司法研修所編『4訂民事訴訟第一審手続の解説』 (法曹会)
司法研修所編『紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造』 (法曹会)
○参考書
司法研修所編『民事事実認定教材―貸金請求事件』(法曹会)
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1導入のための授業
 初回は,小林講師が,紛争解決のための民事訴訟の意義等について、研究者としての立場から導入のための授業を担当する。
2二回目以降は,足立講師が、実務家としての立場から講義を行う。
序論 訴訟の基本構造
 民事訴訟の基本構造に関し、民事訴訟の実質的構造、訴訟物の意義と機能、請求原因、抗弁、再抗弁の意義とその働きなどについて総論的な検討を行う。
3要件事実の基礎その1 
売買代金請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討する。併せて、要件事実に関する諸問題(主要事実と間接事実の区別、法律上の推定、規範的要件等)についても検討し、要件事実の意義や機能を具体的に修得させる。
4要件事実の基礎その2 
賃金請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討し、売買型と賃貸型の契約の差異、貸借型の契約の特長について理解させる。
5要件事実の基礎その3
 所有権に基づく土地明渡し請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討し、物件的請求権一般、所有権に関する権利自白の活用等について修得させる。
6要件事実問題演習その1
 所有権に基づく不動産明渡し請求を題材に、所有権訴訟の典型的な攻撃防御法を検討し、対抗要件の抗弁、所有権喪失の抗弁の2類型を題材に、理解を深めさせる。
7要件事実問題演習その2
 所有権に基づく登記手続請求訴訟について、簡単な事例を題材に、訴訟物、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討し、登記訴訟一般、登記制度等について、理解を深めさせる。
8要件事実問題演習その3
 所有権に基づく所有権移転登記手続請求について、所有権移転登記手続請求、抵当権設定登記抹消登記手続請求の典型的な攻撃防御方法を検討する。
9要件事実問題演習その4
 賃貸契約終了に基づく建物明渡し請求を題材に、訴訟物の捉え方、請求原因、抗弁等、主張・立証責任の分配等を検討する。
10要件事実問題演習その5
 賃貸借契約終了に基づく建物明渡し請求を題材に、期間満了を終了原因とする場合に、借地借家法により民法の原則が修正され、要件事実も修正されることや、更新拒絶の正当事由等を例に、規範的要件の意義、内容等について検討する。
11要件事実問題演習その6
 所有権に基づく建物引渡し請求を題材に、占領権原の抗弁について、具体的に検討し、賃貸借契約終了に基づく建物明渡しとの請求原因の差異、賃料不払いを理由とする賃貸借契約の解除の要件事実についても検討する。
12事実認定序説
 事実認定の対象、事実認定の方法及び資料、処分証書と報告証書、文書の真正、成立の推定、経験側の機能等、事実認定の基礎について総論的な講義を行う。
13事実認定問題演習
 賃金請求事件の模擬記録を用いて、事実認定(判断形成過程)を学習する。併せて、代理人による証拠収集、立証活動についても検討する。

  

Copyright (C) 2006 Sophia University
By:上智大学 学事センター