2006年度上智大学シラバス

2006/03/09更新
◆生物科学特論Ⅲ - (後)
黒岩 常祥
○科目サブタイトル
ゲノム科学で細胞の基本構造と機能の解読
○講義概要
 約20億年前われわれを含むほとんどの生物を構築する細胞である真核細胞がが極限環境(高熱強酸性)下で誕生した。その誕生、構築原理、そして環境適応のしくみを、ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官(オルガネラ)に視点をおきながら、ゲノム科学をはじめ全ての生物科学的技術や思考をつかって解析・解読する過程を講義する。
○評価方法
出席状況(70%)、授業参画(10%)、レポート(20%)
○テキスト
テキストは無いが、毎回最新の研究を整理したプリントを配布する。
参考書としては以下の本が大学図書館にあり参考になる。
黒岩常祥『ミトコンドリアはどこからきたかー生命40億年を遡るー』 NHK出版・2000年
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1原核細胞の誕生:
極限環境(高熱強酸性)下で生命は誕生し最初にRNA世界があった。
極限環境の意義。
2原核細胞の基本構造と機能:
DNA世界の構築によって生物世界は安定化した。
生物の基本単位。
3ウーズの画期的な3ドメイン説:
生物は進化し始原細菌から真正細菌と古細菌に分岐し、古細菌から真核生物が生まれた。従って生物世界は真正細菌、古細菌、真核生物の3ドメイン(超界)に分類される。
生物現象の理解に必須。
4真核細胞の誕生:
古細菌もしくは古細菌が発達した宿主真核細胞に真正細菌が共生し、ミトコンドリアとなり真核細胞が誕生した。
5真核細胞の戦略1:
宿主真核細胞はαプロテオ細菌をミトコンドリアにする際に、大量の遺伝子の収奪をおこない、ミトコンドリアの自由を奪った。
生物世界は共生か闘争か。
6真核細胞の戦略2:
宿主真核細胞はαプロテオ細菌をミトコンドリアにする際に、母性遺伝を発明しミトコンドリアの遺伝子組み換えを阻止する母性遺伝を発達させた。
オルガネラの結婚をさせないわけ。横田めぐみさんの実在検証。
7真核細胞の戦略3:
宿主真核細胞はαプロテオ細菌をミトコンドリアにする際に、ミトコンドリア分裂装置(リング)を作り、ミトコンドリアが自由に増殖できないようにした。
エネルギー変換器(発電所)を自由に増やす。
8葉緑体の誕生:
シアノバクテリアが始原真核細胞に共生し色素体(葉緑体)となり、植物が生まれた。自由な生活を送っていた細菌が何故光合成をするだけの葉緑体になったのか、αプロテオ細菌をミトコンドリアの前駆体細菌(共生体)にしたと同じ戦略がみえてくる。
全ての生物の生存は植物に依存。
9真核細胞の基は植物:
ミトコンドリアと葉緑体が全くおなじような戦略を受けるのは何故か。それは起源が同じものである可能性があるからである。即ち、真核生物の基は植物であるとの結論に至る。
真核生物の起源の根本的理解にむけて。
1021世紀の生物学・ゲノムを基盤に:
真核生物ではじめてゲノムを100%解読した。その意義と発展性について述べる。
生物科学の未来を語る。

  

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