2005年度上智大学シラバス

◆倒産処理法 - (前)
田頭章一
○講義概要
 民事法の基礎知識を有する学生を対象に、倒産処理法の基本的問題を検討する。最近、企業再建型手続が社会的な注目を集めていることをふまえて、破産手続等の清算型手続だけでなく、再建型手続についても相当の時間をとって講義する。また、私的整理や個人(消費者)の倒産手続についても取り扱う。
○評価方法
授業への出席・参加状況と小テスト・期末試験の成績を総合的に評価する。
○テキスト
山本和彦『倒産処理法入門』 有斐閣・2005(予定)
○参考書
青山ほか編『倒産判例百選(第3版)』(有斐閣)
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1倒産処理の基礎理論・・「倒産とは何か」からはじめて、倒産手続の種類、倒産手続の存在意義、倒産手続の歴史、倒産統計など倒産処理に関する基礎知識を学ぶ。倒産手続に関する議論では、法と経済学の成果を利用した説明も取り入れ、なた裁判所における倒産手続だけでなく、私的整理や行政的な倒産予防措置など、幅広い視
2倒産手続の申立てと開始・・ 企業(会社)の倒産を念頭におきつつ、各種倒産手続利用適格、開始要件、保全処分(手続開始前の処分)など、申立段階での手続の流れと法的問題点を検討する。また、開始決定のための裁判所の審査方法、および開始決定の効力、倒産手続の機関などについて説明する。
3倒産手続の申立てと開始
     〃
4倒産債権等の処理・・ 倒産債権(破産債権、再生債権等)および倒産債務者に対するその他の債権(財団債権、共益債権等)の意義と倒産手続の中での取扱いについて検討する。倒産債権の届出、調査等については、具体的な書式等を用いて、手続の意義と流れを適切に理解してもらうように努める。
5倒産債務者財産をめぐる法律関係の整理・・契約関係を中心として、倒産前から債務者が関与していた法律関係が倒産手続の開始によっていかなる影響をを受けるかについて検討する。この分野は契約の種類によって個別の検討が必要であり、また立法・解釈上多くの論点が存在するところであるが、
6倒産債務者財産をめぐる法律関係の整理・・(つづき)基本的な法規定の正確な理解と重要な法律関係の処理について、受講者も参加した形でのケース研究も取り入れつつ講義をすすめる。
7倒産債務者財産の変動・・清算配当や再建のための財産的基礎となる「倒産債務者財産」の変動について、取戻権、担保権の処遇、相殺、否認の各視点から検討する。これらの諸点は、実体法とも関わる点であるから、必要に応じて民法などの実体法の議論に戻りながら、検討する。本テーマは判例の蓄積もあり、解釈上の論点が数多く存在するから、
8倒産債務者財産の変動・・(つづき)比較的多くの時間を割くこととする。
9倒産手続の進行と終了・・各種倒産手続ごとに、手続進行や終了形態の違いを確認し、清算と再建という基準を指針にしながら、倒産手続とは異なる手続の特徴が存在することを説明し、実際の再建計画の例などを参考にしながら、再建計画の要件などに関する法的規律を受講生に理解してもらうようにする。
10消費者倒産手続・・消費者の倒産に伴う諸問題を考察の対象とする。多重債務問題の背景(とくに消費者信用の拡大)をふまえつつ、いわゆる任意整理や特定調停を含む債務整理方法を紹介し、消費者破産手続および個人再生手続の解釈問題を検討する。
11企業再建手続の重要問題・・企業再編法制と倒産手続との関係、再建型私的整理に関する諸問題、会社再建手続と担保権の処遇、再建計画をめぐる法律問題などについて重点的に検討する。
12企業再建手続の重要問題
    〃
13国際倒産法・・「国際倒産処理手続の承認援助に関する法律」を中心にして、近時実現した国際倒産法制の現状と問題点を考察する。外国法の状況などを参考にすることにより、受講者が国際的な視点から制度を考える視点をもつことを促したい。

  

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