2005年度上智大学シラバス

◆日本史特講(近世都市と情報) - (通)
渡辺浩一
○講義概要
 前期では、播州三木町に関する17世紀末から20世紀初頭までに書かれた歴史叙述を読み解いていく。その場合、虫干し行事という儀礼や文書保管という実践的行為との関連を重視する。比較史の観点も取り入れる。三分の二は近世文書の近世史であり、残り三分の一は近世文書の近代史である。
 後期は、日本の近世都市を対象として、情報の伝達・蓄積について論じる。より具体的には、情報伝達に関しては、特に法令をとりあげ、伝達媒体・方式の多様性と変化を取りあげる予定である。手書き文字という媒体では、掲示(高札など)と回覧(廻状)がある。印刷媒体では、18世紀末からは木版刷りのものが時折出現するようになり、明治初年に至って活字印刷が導入される。
 情報蓄積に関しては、町奉行所や町会所での文書保管の問題を検討する。
○評価方法
出席状況(30%)、授業参画(30%)、レポート(40%)
レポートは前期・後期それぞれ1度ずつ課する。課題は講義内容の批評。分量は400字詰め換算5枚程度。参考文献(テキストではない)最低1本の参照を条件とする。
○テキスト
渡辺浩一『まちの記憶―播州三木町の歴史叙述』 清文堂・2004年
○他学部・他学科生の受講

○授業計画
1プロローグ-夏の義民祭り
2第1章 近世の記憶 (1)近世三木町の都市構造
3第1章 近世の記憶 (2)想起される記憶
4第1章 近世の記憶 (3)文書保管儀礼と歴史叙述
5第1章 近世の記憶 (4)宝蔵文書の保管状況
6<特論>イングランド・グレイトヤーマスとの比較
7第2章 記憶の考証と演出 (1)歴史叙述の展開
8第2章 記憶の考証と演出 (2)物語構築の背景
9第2章 記憶の考証と演出 (3)近世日本の都市歴史叙述
10第2章 記憶の考証と演出 (4)領主・公儀との交流と秀吉伝承
11第3章 近代の記憶 (1)公式の歴史叙述
12第3章 近代の記憶 (2)時頼伝説の復活と躍動する義民
13第3章 近代の記憶 (3)近代の文書保管儀礼
14エピローグ-冬の義民祭り
15(予備日)
16第1章 高札 (1)近世高札の概要とその系譜・成立
17第1章 高札 (2)高札の管理
18第1章 高札 (3)高札の終焉
19第2章 廻状 (1)武家社会の廻状
20第2章 廻状 (2)沿岸地域の廻状―公儀浦触
21第2章 廻状 (3)町方・村方の廻状
22第3章 木版刷り法令 (1)武家社会の木版刷り法令―服忌令・武家諸法度
23第3章 木版刷り法令 (2)村方の木版刷り法令―いわゆる慶安御触書
24第3章 木版刷り法令 (3)江戸町触―寛政度板刻・天保御触書集覧・嘉永防火法令
25第3章 木版刷り法令 (4)木版刷り町触の背景
26第3章 木版刷り法令 (5)近代へ―市政日誌・太政官日誌
27第4章 文書保管 (1)京都六角町と江戸大伝馬町
28第4章 文書保管 (2)京都町奉行所と江戸町奉行所
29第4章 文書保管 (3)高山町会所と飛騨郡代高山陣屋
30(予備日)

  

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