特別シンポジウム「コロナ禍と国連」を開催しました

7月4日(土)、本学主催の特別シンポジウム「コロナ禍と国連」が、上智大学国際協力人材育成センターの協力のもと、オンラインで開催されました。当日は本学学生のほか、全国各地から登録した100人以上の高校生や、さらに海外からの参加者もあり、約400人が議論に耳を傾けました。

シンポジウムのフライヤー

新型コロナウイルス感染症は個人の健康への影響だけでなく、国家間の関係や人の国際移動、開発支援、国際保健衛生の在り方などに深刻な影響を与えています。このシンポジウムでは、国際協調や多国間主義を基調とする国連が、この状況にどのように対処すべきなのかをテーマに、杉村美紀グローバル化推進担当副学長の進行のもと、4人のパネリストが発表を行いました。


曄道佳明学長による開会の挨拶に続いて、国際協力人材育成センター所長の植木安弘グローバル・スタディーズ研究科教授が「新型コロナとグローバルガバナンス」と題し、感染拡大の要因と国連の対応と役割について解説しました。各国が自国第一主義に向かうなかで、グローバルガバナンスの再構築には、国際保健問題の非政治化、治療薬やワクチンの開発と公平な配布、および市民社会の関与と協力が不可欠であり、誰一人取り残さないための努力が重要であると話しました。

社会や経済に対する支援について語る近藤哲生氏

次に、近藤哲生国連開発計画(UNDP)駐日代表が「国連システムによる新型コロナウイルスの影響への社会・経済的支援の枠組み」と題して発表しました。

新型コロナウイルスは、全世界が直面している第二次世界大戦以降の最大の危機であると位置付け、これに対するUNDPの総合的アプローチを紹介しました。国連システム全体では「医療支援」、「弱者支援」、「経済復興」、「マクロ経済支援」および「社会の統合・連帯と格差是正」の5つの柱を立てて取り組んでおり、UNDPは技術面のリーダーとして支援していくとして発表を締めくくりました。

佐藤摩利子氏は社会的弱者の深刻な事態を指摘

続いて、佐藤摩利子国連人口基金(UNFPA)東京事務所長が発表を行いました。

人口は単なる「数」の問題ではなく一人一人の「尊厳」の問題であって、いついかなる場合でも個人や家族の選択と決定が尊重されなければなりません。しかし、コロナ禍においては、女性や妊産婦、高齢者など社会的弱者の健康と生活が脅かされる深刻な事態となっていると指摘しました。UNFPAは、特に女性の健康と権利を保護する活動に注力していると報告しました。

最後に、東大作グローバル教育センター教授がコロナ禍における日本の役割について発表しました。コロナ禍は一国では解決できない典型的な「人間の安全保障」の課題ですが、日本は平和国家として培った信頼を活かし、世界各国の対話を促進するグローバル・ファシリテーターとしての役割を果たせるだろうと述べました。

登壇者の発表後には、事前に寄せられた質問やチャット機能によるリアルタイムでの質問に登壇者が回答し、予定時間を超過して意見交換が行われました。オンライン開催の特性を活かして、地域や時間を超えたシンポジウムとなりました。

上智大学 Sophia University