本学大学院生と教員がボスニア・ヘルツェゴヴィナの協定校サラエボ大学において現地の人々と交流しました

2018年8月27日~9月18日の3週間実施

サラエボ大学哲学部で講義を行う日本語教育学コース担当の小柳かおる教授

2018年8月27日から9月18日にかけて、本学大学院言語科学研究科言語学専攻の日本語教育学コースで学ぶ大学院生3名と同コース担当の小柳かおる教授、およびグローバル教育センター長の小松太郎教授(総合人間科学部教育学科)が南東欧に位置するボスニア・ヘェルツェゴビナ国を訪問し、協定校であるサラエボ大学において現地の人々と多岐にわたる交流活動に取り組みました。

本事業は上智大学「教育イノベーション事業」の一環で実施されたものです。2015年に設置された日本語教育学コースで学ぶ大学院生の能力強化を目的として、2016年から夏に大学院生数名がボスニアに派遣され、首都サラエボ大学で3週間の夏期日本語講座を開催しています。日本語教育学コースはその特色として、学習者の背景やニーズに応じた教授法を重視しています。大学院生達は、日本から遠く離れた南東欧の国で、自らカリキュラムやレッスン計画を作成し、多様なバックグラウンドや関心を持つ受講生を対象に日本語教育に取り組んでいます。また、実地研修期間中は、日本語講座での新たな発見や試みた工夫について英語で発表し、現地の教員や学生と話し合う機会を得ています。

サラエボ大学で開催された「キッズデー」

本事業は、大学院生の能力強化という目的以外にさまざまな波及効果を生み出しています。大学院生達は、言語教育を通じた異文化理解や平和教育を議論する異文化間教育ワークショップに参加した他、在ボスニア日本大使館やサラエボ大学主催の日本関連イベントで積極的に日本語・日本文化を発信しました。2018年度は在ボスニア日本大使館が「September Japan」と銘打って日本紹介月間に指定しています。この期間に開催された「キッズデー」では、折り紙や書道紹介などのコーナーで子供達と触れ合いました。イベントは盛況で、改めて日本文化への関心が現地社会で高いことが認識できました。

右から:上智大学小柳教授、サラエボ大学哲学部学部長Dželilović教授、対外交渉担当djuliman博士、哲学部Kasumagic-Kafedzic博士(2016年度本学招聘教員)、上智大学小松教授

9月中旬には、小柳・小松両教授がサラエボ入りし、サラエボ大学で講演(日本大使館・サラエボ大学哲学部共催)を行いました。まず小松教授が「Education for Sustainable Development (ESD): What, why and how in higher education?」のタイトルで、「公平・公正で持続可能な社会」について考える教育の在り方について高等教育の文脈で話題提供を行いました。続いて、小柳教授が「What second language acquisition research tells us about foreign language instruction」のタイトルで、第2言語習得プロセスに関する研究が外国語教育に示唆することについて最新の研究成果を交えつつ、発表を行いました。教室にはサラエボ大学の学生や一般市民などが聴講し、講義の後は活発な意見交換が行われました。

サラエボ大学では、将来「日本研究・日本語学コース」を設置する計画を立てています。上智大学はカリキュラム構築や人材育成の面から、この計画を支援していきます。また、スロベニアの大学など南東欧地域で日本研究・日本語学講座を有している大学との連携を促していきます。1990年代に凄惨な紛争を経験したこの地域では、今もなお民族間・国家間の緊張が存在しています。そのような社会状況の中で、日本語・日本理解の活動を通じて、様々な人々が交流し協力する場を作るのは、上智大学の建学の理念である「叡智(ソフィア)が世界をつなぐ(Sophia- Bringing the World Together)」を象徴している活動であると言えるでしょう。

上智大学 Sophia University