海外大とのネットワークを強化し、グローバル教育と国際通用性の高い研究を促進する

グローバル化推進担当副学長
法学部 国際関係法学科 教授
森下 哲朗

グローバル人材の育成や、国際社会に貢献する研究を促進するには、海外大学との連携が欠かせません。上智はこれからグローバル・ネットワークをどう拡充していく考えなのか。グローバル化推進担当副学長が語ります。

大学間のグローバル・ネットワークを強化する意義

海外の大学や研究機関とのグローバル・ネットワークを広げ、関係強化を図ることは、大学にとって教育・研究の両面で重要な意義があります。

教育面の意義は、留学の促進です。今、大学は社会からグローバル人材の育成を求められています。「他国のさまざまな人と出会い、異文化に触れ、視野を広げ、世界とつながる力を身に付ける」など、学生がグローバルな体験をする機会として海外留学は言うまでもなく有効です。

経済的な負担を考えると、留学先の大学に別途学費を払う必要のない交換留学は魅力的です。また、交換留学先の大学から多くの学生が上智大学に留学してきます。交換留学のパートナー大学が世界各地にあるということは、学生の教育にとっても、キャンパスのグローバル化推進にとっても、大きなメリットがあります。

研究面でも、海外との交流は大きな意義があります。今、大学には国際社会に貢献できる研究が期待されています。社会のグローバル化が進む中、もはや国内に閉じた環境で研究していればいいという状況ではなくなり、国際通用性の高い研究成果を上げることが、より強く求められるようになっています。上智大学の研究者が他国の研究者と交流できるグローバル・ネットワークの構築が欠かせません。

上智大学はグローバルな広がりを持った教育・研究のトップランナーであることを社会から期待されています。グローバルな教育、研究の基盤となる海外とのネットワークの強化は、常に意識しておかなくてはいけないでしょう。

協定校の「数」を増やす戦略から「質」を重視する戦略にシフト

2024年6月現在、上智大学は83の国・地域の404大学と協力に関する覚書を締結しています。交換留学協定校は63か国342大学に上ります。スーパーグローバル大学に選定されていたこともあり(※1)、これまでは協定校の数を増やす努力をしてきました。これからは、それに加え、クオリティを高めたいと考えています。

クオリティを高めるという意味は、大きく2つあります。

1つは、国・地域を代表するようなトップクラスの大学と新たに協定を結ぶこと。

これまでも本学は、その国・地域のトップクラスの大学と、積極的に協定を結んできましたが、まだそれができてない国・地域があります。そうした国・地域のトップクラスの大学と関係をつくれるよう、戦略的に働きかけていきます。

もう1つは、すでに協定を結んでいる大学との関係強化です。

交換留学協定を結んでいる海外大学は数多くありますが、留学のみならず、国際共同研究や教職員の交流の面でも連携する大学の数を増やしていきたいと考えています。

上智大学はグローバル教育の面では高い評価を得てきましたが、研究に関して同様の評価を得られているかと言われれば、残念ながら疑問符がつきます。大学の規模も世界的に見れば大きいとは言えず、十分にカバーできていない研究分野もあります。しかし、伸びしろのある研究分野を海外大学と補完し合うことによって、よりイノベーティブな研究の実現が期待できるでしょう。

※1 「スーパーグローバル大学創成支援事業」は、日本の高等教育の国際競争力を強化し、優れた能力を持つグローバル人材の育成を目的とした文部科学省の支援事業。上智大学は、スーパーグローバル大学:グローバル化牽引型(これまでの実績を基に、新たな取り組みに挑戦し、日本のグローバル化を牽引する大学)として指定されていた。事業は2023年度に終了。

ASEAN、インド、アフリカの大学と研究を軸にした連携強化へ

グローバル戦略上、今、注目しているのは、国としてはインド、地域としてはASEANとアフリカです。この3つの国・地域は今後、国際社会でますます存在感を増すと考えられます。

ASEANにはすでに多くの協定校があり、かつ、SophiaGED(※2)という拠点もありますが、これまでの連携の中心は教育面でのものでした。今後は、教育面での連携をさらに高いレベルのものとすることに加え、研究面での連携や、ASEAN地域からの上智大学の学部や大学院に学位取得のために留学してくる学生の数を増やす必要があると考えています。

※2 上智学院が出資しているバンコクに所在する会社。上智大学生向けのASEANでのスタディ・ツアーや高校生向けのプログラムなどを提供している。

2024年4月には、世界最高峰のAI、IT人材を輩出する名門・インド工科大学デリー校と新たに連携協定を結びました。同大学とはすでに研究面での取組みをスタートしていますが、今後は教育面での連携も実施してきたいと考えています。

また、アフリカの大学とは、これまでも研究者個人や研究室単位でつながりはありましたし、いくつかの協定校もありますが、今後は大学としてのつながりを強化したいと考えています。特に、研究面での連携や、アフリカからの留学生の増加が重要であると考えています。

グローバル・ネットワーク強化と教育の拡充を一体的に推進

ここまで、グローバル・ネットワークの話をしてきましたが、留学や国際共同研究を促進するためには、国内の環境整備も同じように大事だと考えています。

たとえば、上智から海外大学院特別進学制度(※3)を使ってアメリカの有力大学の大学院にチャレンジする学生はいますが、上智が受け入れ側になる特別進学制度はまだありません。また、海外の高校生をより多く上智大学の学部生として受け入れるためには、英語での教育力を高める必要があります。さらに、学生生活のサポート体制の強化も必要です。海外の学生に、「ぜひ上智大学の学部や大学院で学びたい」と思ってもらえるよう、教育や体制の拡充を図っていかなければいけないでしょう。

大学が本年度の新入生を対象に実施したアンケートでは、新入生の8割近くが「大学時代に留学に行ってみたい」と回答しています。しかし、現状では在学中に海外留学を経験する学生は2割に満たない程度です。高いモチベーションを持って上智大学に入学して来た学生の皆さんの期待に応えなくてはいけません。より留学しやすい環境の整備等を含め、彼らを後押しできるような施策を実施していきたいと考えています。

※3 卒業後に海外大学院への進学を希望する学生が、上智大学の推薦を受けて出願する制度。大学によっては優先的な審査や、一部費用の減免等のメリットがある。

上智大学 Sophia University