上智大学

大学案内 2019年度 大学院・助産学専攻科入学式 式辞

2019年度 大学院・助産学専攻科入学式 式辞

2019年(平成31年)4月2日
上智大学長 曄道佳明

博士後期課程、博士前期課程、修士課程、助産学専攻科の修学という選択を行い、新たなる決意を持って、本日の入学式に臨まれている皆さん、ご入学誠におめでとうございます。ご臨席のご父母並びにご関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。

皆さんは上智大学で学びと研究を重ねることにより、自らのバックグラウンドとなる高度な専門性を身につけることを目指します。まずはそのチャレンジ精神に敬意を表します。皆さんが取得を目指す学位とは、皆さんがその専門領域において、それまでに誰も知り得なかった新たな知見を導き出し、その成果をまとめあげたことを証するものです。その学位記によって、皆さんがその成果における唯一無二の存在であることを、上智大学が認定するのです。この学位の授与という作業については、上智大学は大いなる社会的責任を負います。その学位は、厳然たる水準を示すものでなくてはなりませんし、それはすなわち上智大学そのものの教育・研究への姿勢を世に問うことになるからです。

一方で、皆さんにとってもこの専門性を獲得するまでの道のりは平坦ではないでしょう。オリジナリティのある着想に始まり、導き出されるその成果は、新たな理論の構築、事象に対する新たな解明や解釈を提示しなくてはなりません。その達成には、周到な研究の計画と実行、そして検証を行い、さらに改善を経て研究を展開するという、いわゆるPDCAサイクルの繰り返しが必要となるでしょう。

PDCAサイクル、Plan, Do, Check, Actionのサイクルは、元々生産技術の品質管理分野において用いられ、現在では社会に大きく普及したものです。実際的な生産活動の場において用いられてきたこの方式も、研究成果を導き出す過程においては異なる側面を持つように思います。それは、研究者が、つまり皆さんですが、計画する研究成果は必ずしも定量的基準をもって評価されるわけではなく、またその成果目標自体も、研究のプロセスで変化することがあり得るということです。

つまり、皆さんの研究プロセスにおいて、新たな課題の発見や、学際的な知見を得て、当初計画した成果目標とは異なる姿の着地点を見出すこともある、そのために新たな方法論の展開を必要とするということも多々あるということです。このことは、先に述べた通り、導かれる成果が、これまでに誰も知り得なかった、あるいは提言できなかった知見である、という点に起因します。つまり、新たに導かれる研究成果においては、その到達度そのものも、またその成果が指摘する内容も、現在では未知のものですから、研究プロセスでのPDCAサイクルは、単に研究の質の向上を目指すだけのものではなく、研究の方向性までも改善する意味を持たせなくてはなりません。

専門性の獲得には、周到な計画性、実行力と共に、これを乗り切るための気概が必要になります。ここにおられる皆さんは、そのいずれに対しても充分な資質をお持ちの方々です。皆さんには、計画する研究成果を導き出すことだけを視野に入れるのではなく、高度な専門性を獲得したその後に、自身がどのように成長していくことができるかを意識しながら、上智大学在籍中の学び、研究を進めていただきたいと思います。そして、学位を取得した後には、その専門性の獲得に要したプロセスを、オリジナルな貴重な経験値として認識し、次なるステップにおいて発揮する力としなくてはなりません。研究の成果そのものだけでなく、研究のプロセスを踏んだその経験が、その後の皆さんの新しい挑戦への推進力となるのです。

先ほど、カトリックセンター長から“知恵の書”の一節(注)が紹介されました。知識ではなく、知恵が正しい生き方を導くことが説かれています。しかし、それは探し求める必要があり、探す人しかその知恵を得ることはできません。このことは高度な専門性の獲得を目指す皆さんに大きな示唆を与えてくれます。皆さんこそ、大学院や専攻科においても、また修了後も知恵を探し続け、またその知恵を他者に還元する存在になっていただきたいのです。良質な社会を導く知恵について常に思いを馳せること、これが新しい社会への導きに最も大切な姿勢ではないでしょうか。

皆さんの上智大学での学び、研究が、皆さんの大いなる成長を導くことはもちろん、皆さんがいずれ本学を修了した後にも、社会のリーダーとして、その専門性を良質な社会の導きに発揮していただくことを切に願い、私の式辞とさせていただきます。

(注)知恵の書 6章12~16節
知恵は輝かしく、朽ちることがない。知恵を愛する人には進んで自分を現し、探す人には自分を示す。求める人には自分の方から姿を見せる。知恵を求めて早起きする人は、苦労せずに自宅の門前で待っている知恵に出会う。知恵に思いをはせることは、最も賢いこと、知恵を思って目を覚ましていれば、心配もすぐに消える。知恵は自分にふさわしい人を求めて巡り歩き、道でその人たちに優しく姿を現し、深い思いやりの心で彼らと出会う。