上智大学

大学案内 2019年度 学部入学式 式辞

2019年度 学部入学式 式辞

2019年(平成31年)4月1日
上智大学長 曄道佳明

新入生の皆さん、ようこそ上智大学へ。私たちは新しいソフィア・ファミリーを迎えるこの日を心待ちにしていました。皆さんを心より歓迎いたします。また、ご父母、ご関係の皆様、お喜びはいかばかりかと拝察いたします。誠におめでとうございます。

さて、日本社会は平成という元号の下でこの30年を歩み続けてきました。平成はまもなく終わります。新しい元号による新しい時代の幕開けを目前に控え、皆さんはどのような心の準備をしているでしょうか? また、海外からここに集まった皆さんにとっては、日本の社会の節目に立ち会う絶好の機会です。この機に、日本という国で、人々の気持ちの変化、新しい社会の取り組みがどのように起こるのか注視してほしいと思います。節目の時に起こる様々な社会現象は、その国の文化、国民性を色濃く表しますから、まさに社会の多様性を実感する良い機会になるでしょう。

時代の節目では、社会は新たな期待を抱くものです。新しい、良い意味での社会の変化が起きることを願うからです。そして、この社会の期待は、まさに次代を担う皆さんに注がれているのであり、皆さんにとっての活躍の場が用意されているのだという見方もできるでしょう。

現代は、グローバル化、高度情報化などにより、様々な変化が常に起こり得る時代と言えます。私たちは変化を続ける社会をどう捉え、どのように向き合うべきでしょうか? この視点に立つと、私たちが取り組むべき事項は大別して二つあるように思います。一つはこの変化に対応することであり、今一つは変化の中から新しい価値を生み出すことです。それでは、この二つを実行する術はどこにあるのでしょうか? それは個人も組織も社会も、学び続ける力を備えることであると思います。社会に出てからは、その折々に何をどう学ぶかを考えていかねばなりません。形態や様態は異なるにせよ、人生100年と言われる時代では、学びの期間は80年に亘るでしょう。しかし、大学で学部教育を受ける4年間は、その中でわずか20分の1にしかすぎません。この貴重な4年間を、人生においてどのように位置付けるか、どのように向き合うか、今一度皆さんにはこの問いに対する自分自身の答えを導いてもらいたいと思います。

このように、学部で学ぶ期間は、皆さんが社会の中でそれぞれの立ち位置、活躍の場を見出す準備の時と言えます。言い換えれば、社会で学び続ける基盤を作るということです。学び続ける時代において、その基盤とはどのように構成されるのでしょうか?

一つは、皆さんが所属する学部・学科のカリキュラムから培われる専門性です。多様な価値が行き交うグローバル社会において、思考、主張、交渉の軸、バックグラウンドなど、核になる専門性を持つことは、社会の信頼を得る大きな手段になります。

今一つは、広くそして深い教養を身につけることです。教養や教養人とは、ネットから情報を引っ張り出す能力でもなく、単なる物知りでもありません。それは人間性、社会性、また人生の設計力を支える源泉です。同時に、国際通用性のある、そして創造力につながる教養を身につけることが肝要です。時代に変革を起こすイノベーションでさえ、その着想は豊かな教養に支えられているものです。

さらに付け加えれば、自分自身の視野を拡げる経験や体験を積むことが重要です。私は、皆さんが学生時代のうちに、一度居心地の悪い環境に身を置くことをお勧めします。家族・友人が周りにいない、言葉が通じない、コンビニエンスストアがない、シャワーが出ない、食事の選択肢がないなどなど、今の皆さんにとっての反対側の世界と言っても過言ではないかもしれません。このような経験は、日頃私たちが使っている“グローバル社会”という言葉に対して、その大きさ、広さ、多様さというサイズ感を皆さんに与えてくれることでしょう。

重要なことは、豊かな人間性に加えてこれら三つの要素、つまり専門性、教養、経験が、有機的に結合した“智”として皆さんに備わることです。それこそが、社会で学び続ける基盤となり、やがて世界をつなぐ叡智に昇華することでしょう。

先ほど、カトリックセンター長からマタイによる福音書の一節(注)が紹介されました。与えられた小さなチャンスが、忍耐の中で育まれ、正しい生き方につながる過程が説かれています。小さな種が少しずつ成長し、よい世界、よい人生を導いていく過程は、まさに人間の成長そのものを表しています。専門、教養、経験を身につけるということは、人間のあり方や社会への貢献について深く学ぶということでもあります。

改めて私たちは皆さんを心から歓迎します。変化の時代は、チャンスにあふれた時代でもあるのです。他者のために尽くし、常に他者と共にある心を持ち続けるソフィア・ファミリーの一員として、皆さんが上智大学のキャンパスで大きな成長を遂げられることを心より期待いたします。

(注)マタイによる福音書 13章3~9節
イエスはたとえを用いて群集に多くのことを語られた。「種を蒔く人が種蒔きに出て行った。蒔いている間に、ある種は道端に落ち、鳥が来て食べてしまった。ほかの種は、石だらけで土の少ないところに落ち、そこは土が浅いのですぐ芽を出した。しかし、日が昇ると焼けて、根がないために枯れてしまった。ほかの種は茨の間に落ち、茨が伸びてそれをふさいでしまった。ところが、ほかの種は、良い土地に落ち、実を結んで、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。耳のある者は聞きなさい。」