上智大学

大学案内 2019年度 卒業生、修了生へのメッセージ

2019年度 卒業生、修了生へのメッセージ

上智大学長 曄道 佳明

※曄道学長からのメッセージ動画もご覧ください(YouTubeに移動します)

 
皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。また、ご父母並びにご関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。

ご挨拶の冒頭に、新型コロナウイルス感染症によってお亡くなりになられた国内外の方々を悼み、謹んでお悔み申し上げますとともに、罹患された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。本日、学位授与式の場で、皆さんのお顔を拝見しながらお話しすることができず、大変残念に思います。一方で、新型コロナウイルス感染症による社会的影響の拡大は、規模、スピード共に大きく、この判断をせざるを得ませんでした。学位授与式の取り止めについて、皆さんのご理解を頂ければと思います。

皆さんはこの3月をもって、上智大学を巣立ち、新たな挑戦のステージへと駒を進めることとなります。在学中になし得た成果、経験はいかがでしたか? 入学から今日までを今一度振返り、大学、大学院で学んだ成果のみならず、その意義の理解を深めて頂きたいと思います。

冒頭にて述べました新型コロナウイルスの蔓延は、社会を大きな混乱に陥れました。社会のグローバル化やデジタル化も、私たちに様々な変革を余儀なくさせています。AIがビッグデータからさまざまな判断を導き出す社会が到来しています。皆さんが活躍の舞台を大きく拡げようとしているこの社会は、今、何に直面しているのでしょうか。この節目の機会に、ぜひ皆さんに、自分なりの答えを導いていただきたいと思います。AIの技術が瞬く間に社会に導入され、地球環境の急激な変化を肌で実感し、国際的な秩序の先行きが読みにくいこの時代にあって、人間社会は何に成功しようとしているのでしょうか。一方で、私たちの社会は何に失敗しようとしているのでしょうか。

歴史を紐解いても、人間社会は目覚ましい進化を遂げたものの、多くの失敗を繰り返してきたことも明らかです。かつて社会の発展と信じ得たものが、現代となっては警鐘の響きを残している事例は数多くあります。その典型的な例は、環境問題でしょう。自動車の出現は陸上移動に人間の身体的能力を超えた速度を与えました。航空機に至っては飛ぶことのできない人間に高速での大陸間移動を実現させました。現在の社会のインフラの多くは、化石燃料を大きなエネルギーに変換することで成り立っており、この技術に頼ってデザインされたものであります。しかし、今私たちは温暖化の一因とされる二酸化炭素の排出の抑制に頭を悩めています。また、人智を尽くして構築されたと思われる社会制度も同様です。社会保障制度の行き詰まり、社会格差の顕在化、さらにグローバルな視点では、立ち消えない貧困、教育問題など、今我々が依存する社会の制度は必ずしも順調でないことは明白です。制度や技術、これらが目指した高度な人間社会の実現は、短期の間に失敗談となろうとさえしています。わずか100年程度の短期で、です。これは人間の一世代にしか当たりません。つまり、私たちは社会の高度化において、高性能、高効率、利便性を追い求め一定の成果を挙げたものの、たかだか一世代の間で大きな代償を払うことになったとも言えるのです。

改めて、この社会は、今、何に直面しているのでしょうか。私たちが進むべき方向付けの中で、確固たる成功経験を見つけ、拠り所にすることが難しくなっています。私たちは、何に失敗しようとしているのか?この問いかけが必要であると強く感じます。このような社会状況において、皆さんには、臆することなくソフィアンとして活躍していただくことを期待します。まさに、人間そのものを見つめ直し、社会の在り様を問い直し、新しい質の高い社会を構築していくという大きな挑戦が始まろうとしています。“Men and Women for Others, with Others”、上智大学のこの教育精神こそ、この時代に胸に刻んで頂きたいのです。

昨年11月に来校した教皇フランシスコは、「上智大学のキリスト教とヒューマニズムの伝統は、現代世界において貧しい人や隅に追いやられた人とともに歩むこと」であり、学生の皆さんに「今日の社会に喜びと希望をもたらす、その使命に加わるよう期待しています」と語りかけました。皆さんの卓越した能力を、他者に、社会に、そして特に弱者に還元してください。一人ひとりの、その根本的な精神と取り組みが、社会を正しい方向に導いていくことでしょう。まさに、今期待されるリーダー像と言えると思います。

新型コロナウイルスの影響で、学位授与式の挙行取り止めを余儀なくされました。皆さんにお伝えする私のこの挨拶も、人間社会が直面する難題について触れることとなりました。近い将来に、私のこの挨拶が“過剰な憂いであった”となることを、皆さんに託します。皆さんの大いなる飛躍と前進を心より祈念して、私からの挨拶とさせていただきます。

ご卒業、誠におめでとうございます。

2020年(令和2年)3月24日
上智大学長 曄道 佳明

上智学院理事長 佐久間 勤

晴れて卒業・修了の時を迎えられた皆さま、おめでとうございます。また、ご両親やご家族、ご関係の皆さまにも心からお喜びを申し上げます。皆様のご子息、ご息女が大学を卒業し、独立して歩み出されるこの日まで、物心両面で支え、心の祈りを積み重ねてこられました皆様にとりましても感無量の時であることでしょう。また、皆様が本学にお示しくださった温かなご支援、ご協力に対し、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。

卒業する皆さんにとっては、今日という日は上智大学での学びや経験に一区切りを付ける日として、過去を懐かしく振り返り感謝する一時であると共に、これから未体験の新しい生活、新しい世界が皆さんを待ち受けていることを思って、将来に眼差しを向ける希望の日であることでしょう。感謝と希望を心に刻むことのできる日は、人生でさほど多くはありません。本年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、学位授与式という意義深い時を皆さんと共にできなかったことは誠に残念ではありますが、このメッセージを通して、上智のすべての教職員のお祝いの気持ちをお伝えしたいと思います。

古代ギリシャの哲学者の1人が、人間の目について、こう言っています。身体の目は頭の前に付いているが、理性の目は後ろに付いている、と。ものを見て理解し、判断し行動に移すという理性の活動、人間の活動について言っているのです。人間は過ぎ去ったことについて振り返り、あれこれ理解することには長けていても、未来はどこまでも未知の世界で、それを理性の力で制御することはできない、という意味でしょう。

理性の目は頭の後ろに付いているという古代ギリシャ哲学の知恵に似た知恵は古代オリエントにもあります。古代オリエントの王宮には預言者という官僚職があり、神あるいは神々のメッセージを王に伝える任務に当たっていたことはよく知られています。そのメッセージには未来の予言も含まれていました。未来を支配したいという欲望が自然観察による自然法則の発見、その利用という科学・技術の源泉となっていることは明らかです。同じ古代オリエント世界で作られた聖書にも預言者が登場し、神からのメッセージを伝達するという重要な任務を担っています。しかし預言者のメッセージは絶対ではなく、一定の枠がはめられているという特徴がありました。つまり、聖書の著者、とくに『申命記』の著者は、預言者が真の預言者かそうでないかの基準を定めていました。将来の成功や危機からの救いを約束する預言は、すぐには真に受けてはならない。それが実現して初めてその預言者が真の預言者であると認定せよ、と。

そもそも私たちにしてみれば、結果が出る前に正しいか否かを判別して、未来に備える、というのが科学的態度でしょう。結果が出るまで待てというのでは、予言の意味がない、と思われるでしょう。しかしここには現代人の合理的判断が陥りやすい落とし穴に警戒するよう促す知恵が含まれています。神あるいは神々の名のもとにバラ色の未来を予言する預言者の言葉は、王であれ民であれ、耳に心地よいものであるので、歓迎されがちです。だが結果を見ればそれが偽りの予言であったのにも関わらず、前もって慎重に吟味することなく、熱狂主義に振り回されて、王たちは政治を誤り、国は滅び、未来を失ってしまった、というのが、聖書を生み出した人々の苦い体験でした。その苦い体験から人々は、古代ギリシャ哲学の知恵と同様、未来を支配しようとするよりは、謙虚に未来を見つめよ、人間の能力を生かすにはその限界も知っておくべきだ、という知恵を得たのでした。

今日、卒業・修了の喜びの時を迎えられた皆さんは、これから歩んでゆく日々をどのように思い描いておられるでしょうか。明確なものであろうと、まだ漠然としているものであろうと、何らかの目標、人生で目指す目的や価値を思い描いて、それを実現しようと望んでいることでしょう。しかし、歩み始める最初の時が重要です。最初の一歩がその後の道筋を大きく左右します。目指しているものが何なのか、生涯かけて追い求めるほどの価値のあるものなのかを静かに考えて見ましょう。私は何をしようとしているのか、と。そしてどのように、誰と共にという実現の方法も重要な考察のポイントです。とくに重要なのは、その動機は何か、何に促されて歩もうとしているのかを確かめることです。一見合理的で、価値あるものをもたらしそうな目標であっても、行動するのはどこまでも人間であり、人間を動かす動機には自己中心の支配欲、エゴに閉ざされた自己肯定欲が潜んでいる場合があります。そのような場合には、合理性は自己防衛の武器と化し、人間とその世界、自然を破壊する狂気ともなります。

これはアウシェヴィッツと広島・長崎の経験をした世界に生きる私たちこそが学ぶべきことです。「謙虚な理性的人間」、「歪んだ自己中心から解放された理性的人間」こそ真の人間である、という知恵が、昨年11月に来日なさった教皇フランシスコのメッセージに強く提示されていました。教皇はその知恵を生きるよう、上智と上智を卒業する人々に期待して、「何が最善なのかということを意識的に理解したうえで、責任をもって自由に選択する」人となっていることを期待する、と言われました。何が最善なのかを見いだすにも、どんな歪みや偏りからも自由になってそれを選んでいるかを確かめるにも、時間がかかります。皆さんのこれからの日々も、それらを確かめる旅路となることでしょう。しかし最初が肝心という知恵も大切にしてください。新しい世界に一歩進む節目の日である卒業の日に、何を求めようとしているのか、何故それを求めようとしているのか、について、静かに思い巡らしてみてください。

「何が最善なのかということを意識的に理解したうえで、責任をもって自由に選択する」人として上智を卒業・修了する皆さんは、きっと世界をより人間にふさわしいものに創造していけることでしょう。皆さんへの期待をもって、卒業・修了のお祝いの結びといたします。

2020年(令和2年)3月24日
学校法人上智学院 理事長 佐久間 勤

ソフィア会 会長 戸川 宏一 様

ご卒業・ご修了誠におめでとうございます。皆様の長年の努力が見事に実り学位を取得され、この日を迎えられましたことを心よりお祝い申し上げます。またこの日が来るのを心待ちにしておられたご家族の皆様をはじめ、ご関係者の皆様にもお慶びを申し上げます。

卒業・修了される皆様は、それぞれ様々な楽しかった思い出、あるいは苦しかった思い出のある学生生活を終えて、新たな人生へと歩を進めて行かれます。喜びに浸る間もなく、不安と期待をもってこれからの新しい社会生活に思いを馳せている方も多いでしょう。

皆様を取り巻くグローバルな社会は、年々大きな変化を遂げてきています。今や5G革命といわれる時代にあって、IoT、AI、ロボット技術の発達によって、世界の産業の在り方や私達の社会生活も大きく変わってきています。私の卒業時である約半世紀以上前には、とても想像もできなかった時代へと移ってきました。これからもこの変化の速度は速く、5年後、10年後には新しい技術の実用化が更に進み、産業や皆さまの働き方も大きく変化していくものと思われます。
このような時代にあっても、私達が上智大学で学んだ建学の精神や教育理念である、“叡智が世界をつなぐ”、“他者のために他者と共に生きる”はいつまでも生き続けると思います。それは、ともすれば時代に流されてしまいがちな、目先の実利にとらわれる私達に、必ず立ち止まって考えさせてくれることだからです。

皆様それぞれが選んだ社会における道は、必ずしも平坦なものばかりではなく、勿論楽しいこと、嬉しいこともある反面、想像もしていなかったほどの苦しみや、矛盾すること、納得できないことに遭遇すると思います。そんな時には、ただ妥協するだけでなく目的意識、自分らしさを常に持ち、何事にもチャレンジすることが必要だと思います。私自身これまでグローバルなビジネス社会に身を置いて生きてきましたが、挫折を味わった時、苦しかった時にやはり上智の教育理念や建学の精神を思い出していました。またそのような時に、上智の同窓会であるソフィア会の仲間がいることが心強く、また安心感を持つことができました。

ソフィア会は全世界に約14万人の卒業生を抱え、卒業生同志や卒業生と母校をつなぐ同窓会組織です。海外に65か所、国内各地域に76か所、17の学部学科同窓会、課外活動及び企業など業種別を含む151の合計310団体があります。これらの団体をはじめ、その他上智大学の卒業生による同好会組織などが縦横のネットワークを通じて繋がり、会員相互の親睦と大学への貢献を目的に活動しています。同じ教育精神で学んだ上智大学の卒業生は、その数は他の大学に比べ必ずしも多くはないのですが、どこで出会ってもソフィアンとしてお互いに理解し合える強い絆があります。卒業生同志の交流によって、皆様が今後直面するさまざまな生活や仕事上のことで更に幅や心のゆとりが生まれるものと思います。今年は将来に向けて、ソフィア会のスローガン「つなげよう、拡げよう、深めようソフィアンの絆」を決めました。皆様には、是非積極的にこのソフィアのネットワークの輪に加わっていただきたいと思います。

最後に、昨年11月に来日されたローマ教皇フランシスコについてお話し致したいと思います。長崎、広島、東京で平和に向けての印象深いメッセージを発信され、また母校上智大学にも来られました。他の大学にはない上智らしいとても素晴らしい出来事だったと思います。私は教皇フランシスコには特別な思い出があります。実は2013年に上智大学主催の上智大学のルーツを辿る100周年記念旅行で、教皇フランシスコが誕生するバチカンのコンクラーベの日に、理事長をはじめ上智の教職員、卒業生のグループでサンピエトロ広場にいました。教皇の決まることを知らせるシスティーナ礼拝堂の煙突から白い煙が出るのを心待ちにして、その日に何度かサンピエトロ広場を訪れていました。翌日ローマを後にするその日の夕食の席に白い煙が出たとの吉報がもたらされ、教皇フランシスコが誕生したとの知らせを受け大変に感激したことを思い出します。

実は大変偶然なのですが、バチカンに入る前日に、イタリアのフランシスコの聖地であるアシジの教会で、この時代に必要な教皇が選ばれますようにと皆で祈っていました。まさか上智大学を創立したイエズス会出身でアルゼンチン出身のベルゴリオ枢機卿が、しかもフランシスコという名前で決まることは全く予想していなかったので、皆で大変感激したことを今でも鮮明に覚えています。フランシスコ教皇は上智での講話の中で「上智大学が知的教育の場であるだけでなく、より良い社会と希望にあふれた未来を形成して行くための場となるべき」「貧しい人のことを忘れてはならない」と熱く語られる姿に大変感銘を受けました。上智大学の教育精神である「他者のために他者と共に生きる」と共に、このフランシスコ教皇のことを時々思い出し、これから生きていかれる社会の中で大いに自信をもって活躍されることを祈念しております。

いつの日か皆さん一人一人が、上智大学を卒業・修了して本当に良かったと思う日が必ず来ることをお約束して、ソフィア会会長としての祝辞とさせて頂きます。本日はおめでとうございます。

なお、上智大学6号館ソフィアタワーの6階に、卒業生・修了生であれば誰でも利用できるソフィアンズクラブがあります。お時間のある時に是非ともお立ち寄りください。

2020年(令和2年)3月24日
上智大学ソフィア会 会長 戸川 宏一