上智大学

大学案内 2020年度9月期学位授与式 式辞・祝辞

2020年度9月期学位授与式 式辞・祝辞

学長 式辞

会場には、登壇者、代表で学位記を授与される学生、及び謝辞を述べる学生のみが入場。卒業生はZOOMを利用しオンラインでの参加となった。(撮影:KEIGADO)

本日上智大学を巣立つ日を迎えられた皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、ご家族並びにご関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。

さて、皆さんのご卒業を祝すご挨拶ではありますが、本年の新型コロナウイルス感染症の拡大と、これに伴う人間社会の未曾有の経験について、言及しないわけにはいきません。コロナ禍において亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、今なおこの感染症と闘っておられる方々にお見舞いを申し上げます。また医療関係者の方々をはじめとする、日々社会基盤を支えてくださっている方々に深く感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

そして、本日、皆さんをこの会場にお招きできなかったことも大変残念に思います。オンラインでの開催となりますが、心を込めて、この式を執り行いたいと思います。先ほど司会から紹介があったとおり、この式典の運営には、卒業生と現役学生の有志10人のプロジェクトチームが「オンラインだからこそできる意味のあるもの、価値のあるものを卒業生に届けたい」という強い思いで携わってくれています。この場をお借りして彼らに感謝の意を表したいと思います。

一般的に経験、体験とは、個人を、社会を成長させる糧となるものです。しかしながら、今回の望まぬコロナ禍の経験により、人間社会がどこに導かれるのか、未だに見通すことができません。学生として最後の半年間を、このような状況下で過ごした皆さんには、大きな戸惑いと困惑があったものと思います。同様に、私たち大学も、そして社会も、大きな試練に立たされてきました。

皆さんにとって、学びや研究、課外活動、また社会生活の一変は、予期せぬ学生生活をもたらしたことでしょう。大学として、皆さんが馴染んだ学修環境を、また友や師に囲まれた学生生活を提供し続けることができなくなったことを、私たち教職員も大変遺憾に思っています。オンライン授業の導入や、キャンパスの利用の制限などは、大学としても躊躇する判断でした。学生、教職員の安全を第一に考え、またそのご家族、関係者への影響、社会的責任なども考慮した苦渋の決断でありました。皆さんにとって、まさに学生生活の総仕上げの時期に、この災禍が起きたことは、本当に残念でなりません。

しかしながら、皆さんは新しい学びや研究環境に適応し、成果を挙げたことにより、本日学位記が授与されます。私は大学を代表して、皆さんの努力に敬意を表すとともに、この間の大学に対するご理解、ご協力への感謝をお伝えしたいと思います。

曄道佳明学長

私は、今回のコロナ禍は、二つの特筆すべき事態をもたらしたと考えています。一つは、全世界が共通に、そして同時にこの難題に向き合っているという特異な状況です。これまでにも戦禍や自然災害など、人間社会を脅かす幾多の困難がありましたが、全世界が共通に、そして同時にという条件下で発生したこの災禍は、私たちにとって極めて異例の経験であると言えます。

第二に、コロナ禍は、この短期間に、実に多様な困難を人間社会に生じさせました。疫学的な対応の困難はもちろんのこと、政治、経済、教育、文化など、社会を構成するすべての要素において、従来の考え方では打破できない課題を突き付けています。これら二つの特徴を併せ持つ災禍を、近代の人間社会は経験したことはありません。地球に住むすべての人々が、この災禍の当事者となり、向き合うことを余儀なくされています。

現在進行中のこの災禍によって、私たちには、特に若い世代である皆さんには、創造的作業によって、新たな社会を構築していくというミッションが課されました。全世界の、皆さんの同世代の大多数が、同じ困難に向き合っています。グローバル社会の中で、この困難を共有し、国や地域を越えて、これを克服し新しい社会の構築へと向かわなければならないという共通認識が、若い世代の間で共有されているのです。

次世代社会という言葉があります。この言葉は、世代の引継ぎを経ながら社会が移りゆくという、かつての時間の流れを基準に使われていました。これからの時代は、一つの世代の中で、複数の大きな社会変化を経験する時代でもあります。皆さんの上智大学での学び、研究の成果は、あるいは鍛錬された思考力や洞察力は、その時間の流れの中でどのように発揮されていくでしょうか。

撮影:KEIGADO

先ほど、カトリック・イエズス会センター長からマタイ福音書の一節(注)が紹介されました。ここで述べられた装いとは、皆さんの生き方と置き換えることができます。まず良い人になりなさいと説かれています。そのことが、その人が大切にされること、愛されることを導くのです。自分のことだけを考えていてはいけない。自分への愛や装いは、後からついてくるものなのです。世界が困難を共有し、新しい姿を模索するグローバル社会にあって、皆さんのキャリアの豊かさとは、成果を社会や他者に還元するという循環に見出すべきものでしょう。

世界で、“ニューノーマル”が模索されています。新しい生活様式、新しい経済活動、新しい学びなど、社会はすべての側面から新しい姿を描き出そうとしています。そして、その新しい姿においては、コロナ禍との向き合いの中にあっても、誰も取り残されることのないよう、国内はもとより、真なる国際協調の下での共生社会の構築が期待されます。皆さんには、その牽引役としての役割を果たしていただきたいと思います。困難な状況下にあっても、常に他者に対してあたたかい眼差しを向けられるリーダーが待ち望まれています。それは、まさに本学の教育精神である、「他者のために、他者とともに」を具現化することにほかなりません。

文字通りの新しい社会への皆さんの船出にあたり、上智大学は特別な思いを持ってエールを送ります。皆さんの人生の豊かさは、社会の在り様に翻弄されるのではなく、他者に寄り添う自分自身の誠意を源泉とするものであってください。

ご卒業、誠におめでとうございます。


2020年9月18日
上智大学長 曄道 佳明

(注)マタイによる福音書6章25~34節
「だから、言っておく。自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩むな。命は食べ物よりも大切であり、体は衣服よりも大切ではないか。空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。あなたがたのうちだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。なぜ、衣服のことで思い悩むのか。野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたにはなおさらのことではないか、信仰の薄い者たちよ。だから、『何を食べようか』『何を飲もうか』『何を着ようか』と言って、思い悩むな。それはみな、異邦人が切に求めているものだ。あなたがたの天の父は、これらのものがみなあなたがたに必要なことをご存じである。何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはみな加えて与えられる。だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。」

理事長 祝辞

学校法人上智学院 佐久間 勤 理事長(撮影:KEIGADO)

今日、学位授与式の喜ばしい日を迎えられた学部卒業生の皆様、また大学院修了生の皆様、おめでとうございます。オンラインでこの式典に参加しておられる卒業生、修了生の皆様にも、インターネットを介してであり直接対面できないのは残念ですが、心からのお祝いをお送りします。同様に、卒業生、修了生のご家族の皆様、保証人や関係者の皆様にも、心よりお慶びを申し上げます。

たった今学位を受け、上智大学学部・大学院での学びの日々を終え、新しい生活に一歩を踏み出す皆さんにとって、喜びはひとしおの事と思います。人生の次のステップを始める新たな希望に心躍らせていることでしょう。皆さんが出かけていく世界は、この半年あまり私たちが日々経験しているような、予想もつかない種々の困難の中に在る世界ですが、皆さんが上智で学び研究した成果を、これから皆さんが出会うであろう世界の人々と分かち合っていださるように、期待しています。

皆さんが出かけていく世界には、困難な課題を抱えていると同時に希望の光も見いだされます。皆さんがこの半年経験してこられた遠隔授業もその一つの例ですが、一方で学校と学生との間に、そしてまた学生間でも交流を制限され、人と人との交わりが分断されてしまったと感じさせられます。

しかし他方で新しい交流の手段が一挙に普及した結果、世界のどこからでも遠隔授業やディスカッションに参加できるという新しい経験によって私たちは驚かされることとなりました。上智大学のキャンパスは「叡智が世界を結ぶ」という上智の国際性を生かす交流のハブとなるという使命をもっています。しかも上智大学が目指す世界的な交流とは、貧困や差別、教育格差、宗教・文化対立など人類を分断する課題の解決のため、多様な人々の出会いと協働を促し深めるという明確な目標をもつ交流です。

オンラインで参加する卒業生たちに語りかける佐久間理事長

しかし、人と人との出会いには直接の出会い、人格的な出会いが不可欠です。コミュニケーション技術が進み、居ながらにして世界中どこにいても、どこにいる人とでも繋がることが可能になりましたが、真の意味で人と出会い世界を知るには、直接の出会いが不可欠です。その場に出かけて行き、その場の空気、光を感じ、大地に触れ、一人ひとりの人間と対話し、共に生きるようになる。これがイエズス会創立者、ロヨラのイグナチオが重んじた生き方であり、上智建学の精神を形成する源泉です。

人が人と出会い世界とふさわしく関わるためには、この人格的な出会いに一つの明白な特徴が備わっているべきです。昨年11月に上智を訪問された教皇フランシスコが私たちに向けたメッセージの中で言われたことです。つまりキリスト教的、国際的というアイデンティティーをもつ上智において「まさにこれと同じ精神が、皆さんが日本と国外で、もっとも困っている人々を支援しているさまざまなかたちの中に脈々と続いています」(That same spirit continues in the many ways that you provide help to those in greatest need, here and abroad)と。この上智の精神である隣人性と国際性、つまり、もっとも弱い立場にある人を視野の中心に置いた、人と世界との人格的出会いを、上智を卒業・修了する皆さんが、これからの日々に生きてくださるよう期待しております。

皆様、ご卒業、まことにおめでとうございます。


2020年9月18日
学校法人上智学院 理事長 佐久間 勤

ソフィア会会長 祝辞

上智大学ソフィア会 鳥居正男 会長

皆さん、ご卒業おめでとうございます。今月、新たにソフィア会の会長に就任したばかりの鳥居正男です。コロナウイルス感染の影響でこのような形になってしまいましたが、ソフィア会を代表して皆さんにお祝いを申し上げることが出来ますことを大変嬉しく思います。

皆さんは上智大学を卒業し社会に飛び立つことになりますが、大学の卒業というのは人生のとても大きな節目だと思います。次は今まで学ばれたことを、社会に出て実践に移しそして社会に貢献するステージになります。

私は50年前に上智大学で勉強をしました。皆さんのご両親がお生まれになる前になりますでしょうか。恩師の英語学科教授のフォーブス神父が、ご自分の持っているすべての時間を生徒のために与えている姿を見て、自分も他人のために尽くすことができる人間になりたいとの思いを持ち、今日まで社会人生活を送って来ました。それは上智大学の精神 “Men and Women for Others, with Others”の実践に繋がります。

さて、コロナウイルスはまだわからないことが多く、先が見通せないことで私たちは不安な毎日を過ごしています。今回、日本の抱えている課題がはっきり見えてきたと思います。もちろん未曾有の経験ですので、手さぐりにならざるを得ないことは当然としても、国のリーダーシップが見えず、一貫性に欠けるメッセージにより国民が振り回されてしまったのは残念なことです。さらに支援策のスピード感の欠如からデジタル化の致命的ともいえる遅れもはっきりしてしまいました。わかったことは、私たち一人ひとりが責任ある行動をとるほかないと言う事です。

同時に、コロナウイルスがもたらしたのは、変化のスピードです。典型的な例がテレワークです。「働き方改革」の旗のもと、できない理由捜しをしていたところにウイルス感染で否応なくテレワークをせざる得なくなって、やってみると毎日満員電車で長い時間をかけてオフィスに行かなくても仕事は回ることがわかってきました。講義を担当される先生方のご努力と学生の前向きな姿勢により、大学の講義もオンラインで教育が進み、オンライン会議も一般化しました。残念ながら、コロナとの戦いはまだまだ続くことになります。いつか終息したとしても、コロナウイルス前の生活に戻ることはありません。ニューノーマルは、仕事をどこでどのようにするかは個人の自由となる、その代わりに成果についての責任を負うことになります。

撮影:KEIGADO

世界を見回すと課題が山積しています。主要国の政治の混沌、自然災害、貧富の格差の広がりなど。デジタル化が進めば新しい技術を学べる人と学ぶ機会もない人の格差はさらに広がっていきます。変化が激しく複雑で多様化が今までとは比べ物にならないスピードで進んでいる時代では、前例主義では立ち行きません。もはや「正解」というものはありません。「正解」を求めてありとあらゆる関連情報を集めようと思ったら情報の洪水におぼれるだけです。答えは自分の信念に従うことです。自分の信念に従うというのは「正しいことをする」ということです。社会人になると仕事や研究で、自分で判断する場面に直面することでしょう。上智大学での学びを是非生かしてください。

私が懸念していることのもう一つは、日本が自信を失っているということです。清潔で安全面もすぐれているという居心地の良さに安住してしまい、内向きで世界に目を向けなくなっていることを心配しています。グローバル化はますます進んでいきます。島国で日本語だけ話せば苦労のない環境に居る私たちにとって、グローバル環境で標準語となっている英語力、人前で自分の意見を説得力を持って述べる力に欠けるのは、多様性が豊かな環境では圧倒的に不利です。

しかし、コロナの広がりを一定レベルで押さえていることが出来ている日本人の規律性や清潔さに加え、勤勉性、チームワーク、誠実さ、人への思いやりの気持ちなどは大変な強みなのです。皆さん、上智大学で学んだグローバルマインドを持って、是非世界に羽ばたいてください。英語を母国語としている人のように上手に話す必要など全くありません。自分の考えを伝えるんだ、という熱意さえあれば必ず伝わります。是非、グローバルな視野を持ち、ダイバーシティを自然に受け入れ、他人を大切にし、人情見あふれるソフィアンとして元気に活躍してください。

ソフィア会は全世界に約13万人の卒業生を抱え、卒業生同志や卒業生と母校をつなぐ上智大学の同窓会組織です。海外65 か所含む310の団体があります。同じ教育精神を学んだ上智大学の卒業生は、「つなげよう、拡げよう、深めようソフィアンの絆」というスローガンの元に、どこで出会ってもお互いに理解し合える強い絆があります。是非皆さんも積極的にこのソフィアンのネットワークの輪に加わっていただきたいと思います。

本日は大変おめでとうございました。


2020年9月18日
上智大学ソフィア会 会長 鳥居 正男