上智大学

大学案内 2020年度秋学期入学式 式辞・祝辞

2020年度秋学期入学式 式辞・祝辞

学長 式辞

式典会場は登壇者と入学の言葉を述べる代表学生のみが入場。新入生はインターネット会議システム(ZOOM)を利用したオンライン参加となった。(撮影:KEIGADO)

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、ご家族、ご関係の皆様、本日は誠におめでとうございます。

さて、皆さんのご入学を祝すご挨拶ではありますが、本年の新型コロナウイルス感染症の拡大と、これに伴う人間社会の未曾有の経験について、言及しないわけにはいきません。コロナ禍において亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、今なおこの感染症と闘っておられる方々にお見舞いを申し上げます。また医療関係者の方々をはじめとする、日々社会基盤を支えてくださっている方々に深く感謝の意を申し上げます。そして、本日、皆さんをこの会場にお招きできなかったことも大変残念に思います。オンラインでの開催となりますが、心を込めて、この式を執り行いたいと思います。先ほど司会から紹介があったとおり、この式典の運営には、卒業生と現役学生の有志10人のプロジェクトチームが「オンラインだからこそできる意味のあるもの、価値のあるものを新入生に届けたい」という強い思いで携わってくれています。この場をお借りして彼らに感謝の意を表したいと思います。

コロナウイルス感染症による災禍は、社会の全ての側面に困難を与え、今なおその回復への見通しが立たない状況が続いています。社会がこの困難を乗り越えるために、医療をはじめ、経済、国際関係から教育、文化まで、全てに新たな様態が生まれ、新たな価値が創造されようとしているのです。このコロナ禍の特徴は、全世界が共通に、そして同時にこれを経験し、社会のあらゆる側面に多種多様な困難を生み出したことにあろうと思います。今年度、皆さんと同世代の若者のうち、全体の約4割の方々が災禍の当事者としての経験を重ねながら、大学への入学を果たしました。日本に限らず、世界の若者の間で、リアルタイムで同じ問題意識が醸成され、社会を覆う多くの課題に対する解決策を模索しながら、新しい社会を構築していこうとしています。上智大学に集う皆さんたちも、その壮大で創造的な取り組みに大きく貢献されることを期待しています。

曄道佳明学長(撮影:KEIGADO)

それでは、この時代に大学で学ぶ意義とは何でしょうか?このような疑問を持つ人たちも少なくないかもしれません。その解を探す第一歩は、まず今生きる時代を捉えるということにあります。皆さんは、どういう時代に生きているのか、そして生きていこうとしているのか?現在私たちは、社会がAIの駆使によりデータで駆動される時代、紆余曲折を経ながら進むグローバル化の時代、そしてコロナ禍や自然災害などによる災禍によってニューノーマルが求められる時代の真っただ中にいます。総じてそれは変化の時代と言い表すことができるでしょう。「変化の時代」、言い古された表現でしょうか?今一度、その意味を考えてみたいと思います。特に、今私たちが注目すべきは、変化の速度です。速度とは、速さの大きさとその向きで成立する概念です。一言で言えば、社会のありようが、劇的に、急速に、そして人間社会がこれまでに経験したことのない方向に向かって変化を遂げようとしているのです。変化の速度について、さらに皆さんに自覚していただきたいことがあります。皆さんは、現在進行形の社会から見ると、次世代社会を牽引する担い手と称されることが多いと思います。しかしながら、次世代社会とは、世代の引き継ぎの中で社会が移りゆくという、かつての時間の流れで使われていた言葉ではないでしょうか?これからの時代は、一つの世代が複数の大きな社会変化を経験する時代です。つまり皆さんは、先述の通り、多面的に変化し続ける社会を、傍観、追従することなく、先導する役割を担っているのです。皆さんの上智大学での学びは、この変化の時代を生き、自らの豊かな人生を支える基盤作りであるとともに、社会の変化を正しい方向に導き、新しい社会を創造するという大きな役割を果たすための基盤づくりでもあるのです。

先ほど、カトリック・イエズス会センター長からマタイ福音書の一節(注)が紹介されました。ここで呼びかけられた心の貧しい人々、悲しむ人々、柔和な人々などは、社会から虐げられた人々、社会において弱い立場にある人々を指しています。私たち上智大学では、この教えの通り、常に弱者に対する寄り添いを忘れない隣人性を尊重しています。先ほど述べた、社会の変化を正しい方向に導き、新しい社会を創造するとは、弱者が取り残されることのない新しい社会の創造に寄与していただきたいという呼びかけでもありました。このように、人間、あるいは人間社会のあり方についても、上智の学生として強い意識を持ち、自己の成長につなげていただきたいと思います。

コロナ禍は、人間社会にとって望まぬ経験でした。デジタル化やグローバル化の変化の時代に、予期されなかった変化が新たに加わったとも言えます。しかしながら、皆さんは変化の時代を歩むことに怯んではなりません。冒頭で述べたように、皆さんと同世代の世界の若者たちが、この経験を共にして、社会のあるべき姿を模索しています。新しい視野、視点を有する人智が、この変化に正しい方向性を与えることが期待されています。その先導役となるのが皆さんなのです。上智大学はその基盤を作る学びの場を提供します。そして今一度、本学の教育精神を思い起こしてほしいと思います。「他者のために、他者とともに」、上智大学が長年揺らぐことなく伝えてきたこの教育精神こそが、変化の時代に社会を正しい方向に導くリーダーに求められる資質であるといえましょう。

皆さんの上智大学における学びが、研究が、そしてニューノーマルにおける学生生活が、この他者に寄り添う精神を備え、多様な分野で社会を導くリーダーの資質を育むものとなることを期待しています。
皆さんを心から歓迎いたします。


2020年9月22日
上智大学長 曄道 佳明

(注)マタイによる福音書 5章1~10節
イエスはこの群衆を見て、山に登られた。腰を下ろされると、弟子たちが近くに寄って来た。そこで、イエスは口を開き、教えられた。
「心の貧しい人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。
悲しむ人々は、幸いである、その人たちは慰められる。
柔和な人々は、幸いである、その人たちは地を受け継ぐ。
義に飢え渇く人々は、幸いである、その人たちは満たされる。
憐れみ深い人々は、幸いである、その人たちは憐れみを受ける。
心の清い人々は、幸いである、その人たちは神を見る。
平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。
義のために迫害される人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。」

理事長 祝辞

学校法人上智学院 佐久間 勤 理事長(撮影:KEIGADO)

今日晴れて上智大学入学式を迎えられた皆さん、おめでとうございます。ここ入学式場に来ておられる新入生の皆様、またオンラインで式典に参加しておられる新入生の皆さん、ご家族、保証人の皆様、また関係者の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。できれば皆様お一人おひとりに直接お祝いを申し上げたいところですが、まだウイルス感染状況がそれを許しません。一日も早く自由活発な大学の教育研究活動が復活し、皆様を上智という一つの学問共同体、共に歩むファミリーとしてお迎えできた喜びを実感できますように、待ち望んでおります。

入学式の喜びとともに、上智に新たな生命を増し加える皆さんへの期待を表明したいと存じます。すなわち皆さんの勉学が「他者のために、他者と共に」という上智大学の建学精神に基づき、それに方向付けられることです。世界は社会的関係においても人間と自然との関係においても、ますます相互の影響が広くまた深くなる一方で、生存のためあるいは支配のため分断されつつあります。この世界で「他者のために、他者と共に」生きるということは、自然環境、社会、そして人間一人ひとりの現実を知り、課題を見いだし、責任ある人間として自らの可能性に応じて解決に取り組む、という生き方を選ぶことを意味しています。

「他者」は自己と同じく自由と尊厳を備えたかけがえの無い存在です。広い意味では私たちが生きる「共通の家」である地球もまた私たちが共に生きるべき「他者」です。人間一人ひとりが個性を持ち、異なる文化背景や歴史に由来し、それぞれに未来への希望をもっています。相違を無視し、自己の価値観や行動様式のみを善󠄃とするなら、他者と共に生きることにはなりません。「他者」の「他者性」を尊重するためには、まず相手の現実を受け入れること、少なくとも理解しようと努める積極的で開かれた関わりが必要です。

入学式の司会は、上智大学放送研究会(SBC)に所属する学生が担当した(撮影:KEIGADO)

人と人との出会いにおいても、社会あるいは文化間の出会いにおいても、その関わりが深ければ深いほど、互いに影響を与え、変化をもたらすものです。従来慣れ親しんできた知識や価値観が異質なものと出会うとき、その新しいものを理解し共に生きるためには、慣れ親しんできたものを一旦手放し、視野を広げ、こうして新しい自己を形成する必要があります。他者と出会う前の自己は死んで、新たな自己へと生まれ変わらなければ、真に他者を他者として尊重しつつ共に生きることはできません。どのような出会いにも、自己放棄という苦難が伴います。真の出会いであれば、出会う双方がそれぞれに自己の放棄と再生を経験しているはずです。

自己放棄の苦しみという言葉から否定的な響きを聞き取った人も少なくないでしょう。しかしそれは「産みの苦しみ」という表現が言い表しているとおり、人間の成長や学問の進展のため必要な通り道です。より高い価値へと飛躍するには現在の限られた自己から出ていかなければならないのです。真の出会いとは、自己を超越するより高い価値を肯定する行為です。さまざまな限界に閉じ込められ分断に傷つけられた世界と人間の現状がどれほど力を振るい変革不可能と思えるとしても、決してすべてを支配する絶対者ではないことを証明します。「他者のために、他者と共に」生きるという上智の精神は私たちに、人間と世界の限界を越える真の人間性を生きるよう呼びかけています。

新入生の皆さんはこれから大学での学びや研究をとおして、一人の人間として、また世界の一員として、自分自身の生涯の方向性を見いだし、決断することになります。昨年秋に上智を訪れた教皇フランシスコはそのメッセージの中でこう呼びかけられました。「皆さんの大学全体で、若者たちが単に準備された教育の受け手となるのではなく、若者たち自身もその教育の一翼を担い、自分たちのアイデアを提供し、未来のための展望や希望を分かち合うことに注力すべきです」と(Your university as a whole ought to focus on the young, who should not only receive exellent education, but also be part of that education, offering their insights and sharing their vision and hopes for the future)。皆さんがこれから充実した勉学と研究の日々を過ごされ、主体的に自己形成を成し遂げられますように期待し、神の祝福を祈ります。

本日はご入学まことにおめでとうございます。


学校法人上智学院理事長
佐久間 勤

上智大学後援会会長 祝辞

上智大学後援会 川越真理 会長(撮影:KEIGADO)

本日はお時間をいただきありがとうございます。
上智大学後援会を代表して上智大学に入学した皆様にお祝い申し上げます。
新型コロナウイルス感染拡大により、今までと状況が日々変わり、今日この日をやっとの思いで迎えたのではないでしょうか。本来ならこの会場でみな顔を合わせるはずがオンラインという形式になってしまい、不安でいっぱいの方も多いと思います。しかし、不安や孤独を感じている人はあなた一人ではありません。あなたたちを迎える上智大学の教職員の方々も初めてのことながら一生懸命この日の準備を進めてくださったことでしょう。そして何よりもあなた方の先輩たちが "Men and Women for Others, with Others" の理念をかかげ、医療現場、国際社会など様々な場所で戦っています。このつながりを持てたことを誇りに思ってよいと思います。

さて、上智大学では皆様が充実した学生生活を送ることができるよう、多彩なプログラムを用意してくださっています。この恵まれた環境の中で学生生活をスタートさせるにあたり、私から皆様にお伝えしたいことが2つあります。

まず1つは、東京を、日本での昔の呼び名は江戸ですが、ぜひ楽しんでください。
上智大学があるこの四谷は東京の中心にありどこに行くのも大変便利です。
日本の伝統文化である歌舞伎、相撲、またたくさんの神社、お寺、歴史的建造物も多数あります。学生の皆さんは多くの美術館、博物館をリーズナブルな価格で入場することが可能です。四季折々の行事もあちこちでたくさん行われます。もちろん、現代の日本のカルチャー発信地、渋谷、原宿、秋葉原もお勧めです。
今現在は新型コロナウイルス感染拡大により、行動に制約があるかと思いますが、ぜひ在学中の時間を使うことをお勧めします。この状況だからこそ感じることがたくさんあると思います。育まれたしなやかな感性は将来、世界と日本の橋渡し役になるであろう皆様にはきっと役に立つことでしょう。

入学式の映像配信は、卒業生と現役学生が協力して行った(撮影:KEIGADO)

2つ目は、人と人とのつながりの大切さをより意識してみてください。
上智大学の教職員の皆様は生徒1人1人を温かくサポートしてくださいます。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、様々な制約がある中で質の高い教育や環境の維持に努めてくださっています。修学意欲や未来への展望など精神的なサポートにも一生懸命に働いてくださっています。

ぜひ様々な手段で自らアプローチし、対話してください。上智大学はとても家族的で、教職員と学生、そして学生同士の距離が近いことも特長の一つです。より深い関係を築くことをお勧めします。
そして皆様をサポートするのは私達後援会も同様です。ここで少し後援会についてご説明させていただきます。後援会は1973年に学生の父母の有志が大学を財政的に支援することを目的に結成されました。
後援会の目標の1つは学生生活の環境改善です。大学の設備、環境の改善援助はもちろん、課外活動団体への助成もしています。

もう一つの目標は会員同士の親睦を深めることです。学生生活向上のために保証人同士、また教職員との交流を深めています。毎年懇親会があり、情報交換が可能でしたが、今年は11月7日に秋の懇親会、そして教授による講演会をオンラインで開催予定です。
ぜひ、多くの皆様の参加をお待ちしています。

最後に皆様の益々のご活躍とご健康をお祈りして本日のご挨拶とさせていただきます。


2020年9月22日
上智大学後援会会長 川越真理