上智大学

大学案内 2020年度 学位授与式 式辞・祝辞(2021年3月26日)

2020年度 学位授与式 式辞・祝辞(2021年3月26日)

 上智大学長 式辞 

曄道 佳明 上智大学長

皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。また、ご父母、ご関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。皆さんにお祝いの気持ちをお伝えしつつも、今なおコロナ禍との向き合いの中で、困難を抱えておられる方々も多くおられます。早期に社会が回復を果たし、新しい前進へと歩めるようになることを強く祈念するものであります。

さて、ようやく皆さんに一堂にお集まりいただき、こうして時と空間を同じくして喜びを分かち合える機会を持つことができました。この一年、社会が大きな激動の渦中にあり、全世界のすべての世代の人々がこの危機と向き合ってきた中で、皆さん自身も大きな変化を余儀なくされたのではないでしょうか。計画を立てた学生生活を全うすることができなかったという無念もあるかもしれません。社会に出る、あるいは進学するなどの次なるステップへの備えが充分できなかったという焦燥感もあるかもしれません。おそらく、ここに集うすべての皆さんにとって、ご自身への風向きが少なからず変わり、場合によっては逆風の中で過ごした1年であったのかもしれません。

私は、上智大学長として、皆さんに吹き荒れたであろう逆風に強く憤りを感じているところです。また、大学としては、日々変わる状況変化を注視しながら中期的な計画を立て、授業形態の判断、通信環境の整備、課外活動の再開などを考えてきましたが、必ずしも皆さんにとって期待通りではない側面も生じてしまったことを心から遺憾に思います。

こうした状況を踏まえ、本日皆さんが迎えた節目の時に、心からのメッセージをお送りしたいと思います。

先ほど述べましたように、コロナ禍との向き合いは全世界で起きています。現在のこの地球には、コロナ禍から解放されて日々過ごしている人たちは皆無と言ってよいでしょう。全地球市民が、かつてであれば日常だった生活とは異なる毎日を送っています。しかし、今なお全世界で人々の生活は日々営まれ続けています。コロナ禍による激動は、日常という価値をも変えました。私たちの日常の生活は、社会活動の中で最も基本単位であると思います。地球社会は、“多様な日常”の集合であるとも言えます。

皆さんは人生の基本単位でもある日常生活を、これからどのようにデザインしていきますか?皆さんの志や希望、そして夢へのエネルギー源は、その新しい日常の中にもしっかりと居場所を見出すでしょうか。その日常では、皆さんがこれまでに育んできた尊い人間性が発揮されるでしょうか。卒業という節目の時に、ぜひ考えて頂きたいと思います。

一方、コロナ禍は、社会に技術開発、制度設計、経済活動の新しい様態を要請しています。さらに、新しい価値観や倫理までをも創出することが求められています。直前に迫り来るその先の社会において、皆さんはどのような役割を果たそうとしているのでしょうか。社会に対して期待するだけではなく、新しい社会はどうあるべきか、どこに向かうべきか、上智大学の卒業生として積極的に関与していただきたいと思うのです。それは、自分自身の日常を創る社会環境に関与するということでもあります。身の回りにある日常と、社会で果たす役割というミクロ、マクロな世界観の中で、どうぞ充実した人生をデザインし続けてください。

会場の東京国際フォーラムでは、卒業生は座席を1つおきに着席

先ほど、カトリック・イエズス会センターのホアン・アイダル神父からコリントの信徒への手紙の一節【注】が紹介されました。能力や技術を身に付けたとしても、愛のない発揮に意味があるでしょうか。愛は、忍耐強く、ねたまず、自慢しないと説かれています。そして愛は滅びないのです。皆さんのこれからの生き様に、あるいは日常の中で、この手紙で説かれている愛はどのように表現されていくでしょうか?

今後の皆さんの大いなる飛躍と前進が、“Men and Women for Others, with Others”という上智大学の教育精神に支えられ、弱き立場の人々を決して見過ごすことなく、愛を持って社会に喜びと希望をもたらすことを期待いたします。いずれ再びこのキャンパスで皆さんとお目にかかることを楽しみにしています。そのときに語り合いましょう。あのコロナ禍とは、私たちにとって、社会にとって一体何だったのかと。そのときに、皆さんこそが明確な答えを説明してくださることを期待したいと思います。


2021年3月26日
上智大学長 曄道佳明

【注】コリントの信徒への手紙 1 13章1-8節
たとえ、人々の異言、天使たちの異言を語ろうとも、愛がなければ、わたしは騒がしいどら、やかましいシンバル。たとえ、預言する賜物を持ち、あらゆる神秘とあらゆる知識に通じていようとも、たとえ、山を動かすほどの完全な信仰を持っていようとも、愛がなければ、無に等しい。全財産を貧しい人々のために使い尽くそうとも、誇ろうとしてわが身を死に引き渡そうとも、愛がなければ、わたしに何の益もない。
愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。不義を喜ばず、真実を喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。愛は決して滅びない。

 上智学院 理事長 祝辞 

学校法人上智学院 佐久間 勤 理事長

本日 晴れて学位授与式を迎えられた学部卒業生、研究科修了生の皆さん、また1年の課程を終えて修了式を迎えられた助産学研究科修了生の皆さん、おめでとうございます。また、オンラインでこの式典にご参列くださっておられるご家族や保証人、関係者の皆様にも、お祝い申し上げます。この喜びの時を迎えて、皆様の心には上智での学びと研究の生活を振り返り、さまざまな思いがよぎっていることと思います。

とりわけ過去の一年間は皆さんが入学されたときには想像だにしなかった大きな困難や変化を体験するというチャレンジの一年間でした。登校しての講義の受講や実験、演習、課外活動が大幅に制限され、学外施設での臨地実習が学内での実習に切り替わるなどの困難を乗り越えて、皆さんは学位授与式を迎えておられます。今皆さんは、ご家族や多くの関係者の皆様からの支援もあったことも感謝とともに思い起こしておられることでしょう。

この一年は大学での学びが大きく変化しました。学びや研究の対象となる情報の獲得やディスカッション、共同研究など学問的活動は瞬く間に世界全体と繋がるものとなりました。数年あるいは十年単位で起こる変化が僅か1年で実現したと言われるほど劇的な変化を私たちは体験しました。しかし同時に直接の対話、顔と顔を突きあわせての学びと研究の活動の場が大学にとっていかに重要であるかを、あたかもいのちの水を渇き求める喉の渇きのように感じてもきました。この学位授与式の式典で、皆様と直接対面できることに私が今大きな喜びを感じている理由がここにあります。

皆様だけでなく、世界全体がパンデミックの経験をしている最中にありますが、これが滅多に起こらない歴史のエピソードに終わらない、という見解もあります。地球温暖化など自然環境の変化、際限なく拡大する冨への欲求とその裏腹の関係にある貧富の格差の深刻化は、これからもますます一つになっていく地球世界に、かつて人類が経験してこなかった新たなチャレンジをもたらすことになるだろうというのです。災害やパンデミックが頻発するかどうかはともかくとして、人間と自然、個人間、またさまざまな形態の人間社会の間で、人間の尊厳にふさわしい調和ある関係を確立することが、これからの世界の、私たち一人ひとりの責任となっていることを、私たちはこの1年の間に強く意識するようになりました。

上智を卒業、修了される皆様は、「他者のために、他者と共に」生きる人となって母校を巣立っていかれます。「他者」とは自己と異なりながらももう一人の、自己と同じ尊厳をもつ存在を意味します。「私」と「あなた」あるいは「あなたがた」、そして「私たち」という対話的関係を作ることができる存在です。広い意味で「自然」という私たちの源泉、ふるさともまたこの「他者」として尊重されるべきです。「他者と共に」生きるには、他者を自己の欲望の奴隷とすることなく、一人ひとりが尊厳を有する「わたしたち」として生きるためには、わたしたちの生活様式、行動様式を見直す必要があります。格差なくワクチン接種が広がらなければパンデミックの終息が覚束ないように、地球的取り組みを前提とするSDG'sのヴィジョンを実現するには、全体の善を考えて自己の行動や欲望をときには制限することが求められます。自分ファーストの誘惑はいつの時代にも抵抗しがたいものです。「他者」を認めることはその誘惑に打ち克つという苦しみも時には必要になります。

今日母校を卒業、修了される皆様には、上智の精神「他者のために、他者と共に」をそれぞれの場で生きてくださることを期待いたします。そしてまた、皆様の働きをとおして全世界、地球全体に生命が溢れる祝福がもたらされますように、祈願しています。

本日はご卒業、まことにおめでとうございます。


2021年3月26日
学校法人上智学院理事長 佐久間 勤

 上智大学ソフィア会会長 祝辞 

上智大学ソフィア会 鳥居 正男 会長

皆さん、ご卒業おめでとうございます。ソフィア会の会長を務めております鳥居正男です。新型コロナウイルス感染の影響で卒業式の開催がどうなるか心配していたのですが、佐久間理事長、曄道学長始め大学関係者のご尽力のお蔭で、こうして皆さんに直接お会いし、ソフィア会を代表してお祝いを申し上げることが出来ることを大変嬉しく思います。

私は今からちょうど50年前に上智大学の外国語学部で勉強をしました。皆さんのご両親がお生まれになる前になりますでしょうか。恩師のESSの顧問で英語学科教授だったフォーブス神父様が、ご自分の持っているすべての時間を生徒のために与えている姿を見て、自分も他人のために尽くすことができる人間になりたいとの思いを持ち、今日まで社会人生活を送って来ました。それは上智大学の精神 "Men and Women for Others, with Others" の実践に繋がります。

昨年は新型コロナの感染で、日本中そして世界中が振り回された一年でした。昨年は、皆さんにとって、様々なご苦労や困難が多かったことと思います。キャンパスは閉鎖され、就職活動も制限され、さぞ不安だったことでしょう。課外活動も自由にできず、仲間と過ごす時間も大幅に制限されたことと思います。アルバイトで学費を工面していた学生の方々の多くは収入が減り、精神的に大変つらい思いをされたのではないでしょうか。皆さんのご苦労と苦しみは言葉にはできないくらい大変だったこととお察しいたします。教鞭をとられる先生方は、オンライン授業、オンデマンド授業を駆使し、授業の質が保たれるように工夫をされ、そして学生の皆さんが前向きな姿勢で積極的に受講されたことで、教育効果は上がり、授業の質も却って高くなったとお聞きしました。オンラインでの授業だと、対面での大人数のクラスではつい発言をしり込みしてしまうケースも、Zoomの挙手ボタンを押すだけで皆同じチャンスがあり、意見を言いやすいという参画意識の向上につながったとのことでした。

私が代表を務めていますスイスに本社を持つノバルティスジャパンでも、昨年から働き方が一気に様変わりをしました。コロナにより、社員は自宅で仕事をする、いわゆるテレワークが中心となり、東京本社に所属する約1,500人の社員のうち出社する社員は1割ほどで、昨年の2月末から一度も会社に来ていない社員も数多くいます。私自身も会社に行くのは週に半日だけというペースです。実は、将来的にどこでどのように働くかは、社員の意思を尊重して社員一人ひとりが決めるようにしたい、と考えていました。コロナが来たことにより、周到な準備をするまもなく、いきなりテレワークを導入することになり、今までの仕事のやり方とは違う新しい仕事のスタイルを生み出すことになったと言えます。社員にとっては、自宅で仕事をするのは不自由な面も少なくなかったのですが、自分で仕事のペースを決めやり方を考えることを通じ成長に繋がったと感じている社員も多くいます。

世界を見回すと課題が山積しています。主要国の政治の混沌、自然災害、貧富の格差の広がりなど。デジタル化が進めば、新しい技術を学べる人と学ぶ機会もない人の格差はさらに広がっていきます。変化が激しく複雑で多様化が今までとは比べ物にならないスピードで進んでいる時代では、前例主義では立ち行きません。もはや「正解」というものはありません。「正解」を求めてありとあらゆる関連情報を集めようと思ったら、情報の洪水におぼれるだけです。答えは自分の信念に従うことです。自分の信念に従うというのは「正しいことをする」ということです。皆さんは上智大学を卒業し社会に飛び立つことになりますが、社会人になると仕事や研究で、自分で判断する場面に直面することでしょう。上智大学での学びを是非生かしてください。

ソフィア会は全世界に広がる、卒業生同志や卒業生と母校をつなぐ上智大学の同窓会組織です。海外65 か所を含む312の登録団体があります。同じ教育精神を学んだ上智大学の卒業生は、「つなげよう、拡げよう、深めようソフィアンの絆」というスローガンの元に、どこで出会ってもお互いに理解し合える強い絆があります。是非皆さんも積極的にこのソフィアンのネットワークの輪に加わっていただきたいと思います。6号館の6階にソフィアンズクラブがあります。今は閉まっていますが正常化しましたら是非立ち寄ってください。お待ちしています。

本日は大変おめでとうございました。


2021年3月26日
上智大学ソフィア会 会長 鳥居 正男