上智大学

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STP(Summer Teaching Program)

カンボジアの子どもたちと
学生自身の未来を変えるプログラム

上智大学外国語学部英語学科の学生だけが参加できる、夏休み中の中学生に英語を教えるボランティアサークルSTP(Summer Teaching Program)。外国語教育の第一人者である言語教育研究センター長の吉田研作教授が1968年に始めた歴史ある活動で、現在はカンボジアを含む計7地域で活動が行われている。「STPカンボジア」に参加する学生たちに、そのやりがいを聞いた。(インタビューは2019年に収録されたものです)

STP(Summer Teaching Program)
福島香平 外国語学部英語学科2年
柴田奏 外国語学部英語学科2年

学ぶ意欲を高める、面白くて楽しい授業

2018年にSTPは創立50周年を迎えた。2人はどんなきっかけで、このサークルに参加しようと決めたのか。

「子どもたちと校庭でサッカーをやったら、すごく盛り上がりました。コミュニケーションのとり方は一つじゃないと思います」

【福島】私はもともとサッカーサークルに入るつもりでしたが、TwitterでSTPの活動を知り、興味を持ちました。「ボランティア」というと真面目で堅苦しいイメージがありましたが、「STPカンボジア」は英語を教えながら現地の子どもたちとコミュニケーションできるサークルで、面白そうだと思いまして。また、私は子どもの頃に8年間アメリカで暮らしていたので、自分の英語力が生かせるとも思いました。

【柴田】私は英語教師を目指して英語学科に入学したので、STPには「絶対に入らなきゃ!」と思っていたんです。STPが提供するプログラムは、アクティビティーを通して楽しく英語を学ぶのが特徴。ここでの経験は将来に生きると考えました。

【福島】活動のメインは、現地でのティーチングです。毎年8月、世界遺産アンコールワットの観光拠点として有名なシエムレアプで、中学生に英語を教えています。現地には約20日間滞在し、ミーティングなどを行ったうえで9日間のティーチングをします。ワット・チョー中学校での参加者は年々増えており、昨年は約150人の生徒を対象に授業を行いました。

【柴田】とはいえ、9日間で英語力を劇的に上達させるのは、そもそも不可能です。私たちの役割は、子どもたちに「これからも英語を勉強したい」と思わせること。ティーチングを通じて英語に興味をもつ様子が見られると、大きなやりがいを感じます。

現地のニーズを調査して、授業や教材を工夫

STPに参加する学生は、自分たちでティーチングの内容を考えながら、たくさんの学びや気づきを得るという。

「楽しく英語を学んでもらうには、授業や伝え方にも工夫が必要だとわかりました。英語教師になれたら、日本の中高生にも英語学習の楽しさを伝えたいですね」

【福島】STPでは事前の現地調査を大切にしています。例えばシエムレアプは観光都市として成長著しいため、英語学習に対するニーズがどんどん変わっています。プログラムの内容や教材を考えるうえで、事前調査は欠かせないのです。18年はカンボジアでの活動開始から10周年だったこともあり、これまでランダムに行っていたクラス分けを習熟度別にするなど、新たなチャレンジもしました。

【柴田】カンボジアにおける英語の学習環境はさまざまで、日本のように学年によって習熟度が測れません。学年が上でも英語の学習歴が2カ月の子や、中学1年生でも英語の塾に通い、高い英語力をもつ生徒もいます。そこで生徒一人ひとりが自らのレベルに合わせて英語力の向上ができるよう、習熟度別のクラス編成を行いました。また、個々に合わせ丁寧に対応できるよう、STPカンボジアでは2人のメインティーチャーを6人がサポートしてティーチングを行っています。これにより今回は、生徒に今まで以上に寄り添うことができ、ティーチングの質も上がったと思います。

【福島】今まで手書きだったテキストをPCでタイプして作ったり、プロジェクターを導入して動画を使った授業などを組み込んだり、「観光ガイド」などのテーマ学習を取り入れたりと、より楽しく学べる工夫もしました。長い歴史はありますが、毎年新しい試みにチャレンジしているんですよ。

【柴田】勉強以外でのコミュニケーションを楽しむのも、STPならでは。18年は、子どもたちからカンボジアの伝統舞踊「アプサラ」を学んだり、逆に私たちから盆踊りや「ソーラン節」などの日本文化を教えたりと、お互いの文化を学び合いました。

STPの活動をきっかけに、夢が見つかった

在学中の活動は、学生たちの生活や将来にもまた変化をもたらす。カンボジアでの経験を2人はどう生かしていくのか。

現地では手づくりのテキストを使って、ときに遊びも交えながらティーチングを行う

【福島】私は、英語を教える難しさと大切さを改めて実感しました。私は海外で自然と英語を身につけたので、最初にカンボジアに行ったときは、子どもたちの「わからないこと」がわかりませんでした。でも前回は、サッカーの話で一気に距離を縮めることができ、子どもたちに「英語でのコミュニケーションは楽しい」と思ってもらえたと思います。

【柴田】私は授業で、感情を表す「フィーリングの言葉」を取り上げました。暑いとか楽しい、うれしいといった感情をジェスチャーで表現しましょう、と教えたのです。すると後日、遠足に行ったときに子どもたちが顔をあおぎながら「I'm hot!」と習ったばかりの表現を使ってくれました。うれしい思い出です。

【福島】偶然入ったレストランで、店員さんから「STPの人ですか?」と英語で声をかけられたときは感動しました。その人は数年前にSTPに参加したのがきっかけで英語が好きになり、勉強を続けて今の職に就かれたそうです。カンボジアの方々、特に観光都市であシエムレアプの人たちにとって、英語は警察官や観光ガイドなどの職業に就くために必要不可欠なもの。彼らにとって英語学習は、人生を左右する重要なことだと気づかされました。また、先輩たちが10年間蓄積してきた活動の成果を目にして、改めて自分たちの活動に自信がもてました。

【柴田】19年は私たちが最上級生になるので、今までの活動成果を絶やすことなく、また前年以上にティーチングの質を高めていきたいと考えています。ティーチングの内容はマニュアルで共有しているのですが、教室では不測の出来事も起こります。どんなことにも臨機応変に対応したいと考えています。

STPで経験したすべてが、学生のかけがえのない財産になる

【柴田】英語の習熟度に個人差があるカンボジアの子どもたちを教えるには、一人ひとりの子どもたちをより深く理解しなければなりません。子どもと向き合う姿勢や、アクティビティーを通して楽しく学ぶSTPの手法は、教師を目指す身としてはとても勉強になります。将来は日本の学校でも生かしていきたいと思います。

【福島】カンボジアでの活動を通して、これまで知らず知らずのうちに抱いてきた先入観や固定観念がどんどん壊れました。例えば、日本でイメージしていたカンボジアと、現地に身を置いて感じたカンボジアはまったく違います。これをきっかけに、私は夢が明確になりました。将来、新聞記者になって世界のさまざまな地域のことを伝えていきたいと思っています。