2007年度上智大学シラバス

2007/03/06更新
◆環境経済学Ⅱ - (秋)
鷲田 豊明
○講義概要
 環境問題を経済システムの中に内部化するためには、環境そのものに適切な経済評価が与えられ、環境利用に伴う便益と被害が貨幣額であらわされることが不可欠である。この講義では、環境の経済評価手法と、それによってそのことが可能にする、プロジェクト評価、企業・製品の環境負荷評価の応用、環境を含む国民経済計算体系について概説する。
 CVMとコンジョイント分析については、実際のデータに基づいて、計算ができるようにコンピュータルームで実習を行う。コンピュータについての特別な知識は前提としない。
 講義終了後にレポートを提出していただく予定だが、代わりに、筆記試験を行う可能性もある。
○評価方法
授業参画(50%)、レポート(50%)
○テキスト
『環境評価入門』(鷲田豊明著、勁草書房、2005年)の内容にそって講義する。希望者は申し出るように。
○他学部・他学科生の受講

○ホームページURL
http://eco.genv.sophia.ac.jp
○授業計画
1環境経済評価の役割と課題
 経済システムは、市場によって財やサービスが適切に価値付けされることによって、効率的な資源配分を実現する。逆に、価値付け困難な自然環境は浪費され、劣化させられる。環境の経済評価は、環境の内部化にとって不可欠の作業だが、環境の多次元性、環境の実態としての生態系の特質である全体性などを考慮する必要がある。
2政治制度に現れた環境評価
 環境評価は、理論的には新しい分野だが、実態としては環境をめぐる対立とその解決のために事実上行われてきたものである。法令によって環境に対する基準や規制が行われるが、そこでは経済とのバランスが常にとわれインプリシットに評価が行われていた。行政における自然生態系の許可や規制、裁判による賠償もまた環境評価だ。
3費用便益分析(CBA)
 環境(生態系)を利用したり保全したりする活動は、企業や行政のプロジェクトとして実行される場合が多い。プロジェクトに関わる環境にも適切な価値が与えられたとすれば、実行するか否かは、それぞれのプロジェクトの費用便益分析による。費用便益分析の手順、将来収益の現在価値を産出する方法などについて解説する。
4環境の経済価値と評価手法の分類
 環境の価値は、それを利用することからくる価値と、必ずしも利用に結びつかない価値がある。環境の価値の多様な源泉を理解する。こうした価値をとらえる評価手法も、北米を中心に多様で大きな発展を遂げてきた。顕示選好法と表明選考法の区別をトップに、さまざまな環境評価手法を分類し理解する。
5環境に関わる効用変化の貨幣測度
 環境の状態が変化した場合に、その変化を貨幣によって測るには、変化前を基準にするか変化後を基準にするかによって等価余剰と補償余剰という区別の仕方があり、個人が支払う金額によって捕らえるのか、受け取る必要額によってとらえるのかで、支払い意思額(WTP)と受け取り意思額(WTA)がある。
6仮想評価法(CVM)Ⅰ
 仮想評価法は、エクソンバルディーズ号によって汚染されたアラスカ湾の経済評価、日本でも藤前干潟や屋久島などの経済評価によって、ある程度普及してきている経済評価手法である。これらの実際の応用例を解説する。仮想評価法の応用範囲の広さなど優れた特質、調査票の作成や、アンケートのとり方など実際の手続きを示す。
7仮想評価法(CVM)Ⅱ(計算機実習も追加的に行う)
 仮想評価法では、WTPの推計のために二項選択法を用いる。これを理解するために、統計的手法である生存分析、ロジットおよびプロビットモデルを解説する。その上で、このような統計理論を経済学的な理論と接合させるためにランダム効用理論について説明を加える。
8コンジョイント分析Ⅰ
 コンジョイント分析は、計量心理学と環境マーケティングの分野で張ってきた多属性評価手法だが1990年代に入って環境経済評価分野での応用が発展した。コンジョイント分析の基本的な考え方、選択型やペアワイズ型、ランキング型等の分類とそれぞれの特徴を解説する。
9コンジョイント分析Ⅱ(計算機実習も追加的に行う)
 コンジョイント分析のデータ解説のためには、二項選択法およびランダム効用理論の拡張が必要になる。ランキング型、選択型は、ペアワイズ評価のそれぞれについてどのような理論と計算手法が必要になるかを明らかにする。
10顕示選好方の評価手法
 CVMとコンジョイント分析が表明選好型の評価手法であり、回答者のWTPを直接聞くのに対して、実際の金銭支払いに現れた環境に対する評価を捕らえる手法として、トラベルコスト法とヘドニック価格法がある。トラベルコスト法は、自然環境サイトへ観光に来る旅行者がどれだけの費用から推計する。
11環境アセスメントと社会経済評価
 現行の環境アセスメントにおいては、環境に対する経済評価、あるいはそれを前提にしたプロジェクト評価、費用分析が行われることはあまりない。しかし、プロジェクトの代替案を考慮することを前提にすれば、経済評価は必要な手続きである。現行の環境アセスメントの基本的な内容、その問題点などを解説する。
12製品環境属性の多属性評価と環境マーケティング
 ライフサイクルアセスメントは、製品の環境付加属性を明らかにするが、それが社会あるいは市場によってどれだけの金銭評価が与えられるかを示すことは難しい。しかし、市場を意識して環境保全型製品を開発する上でも、製品やサービスの環境属性に経済評価を与えることは重要な課題となる。
13環境経済統合勘定と環境評価
 生態系や生物種、あるいは環境の健康被害などについての社会的評価が与えられれば環境経済統合勘定に応用することが可能になる。日本型環境経済統合勘定の推計例の紹介と、その発展の可能性を示す。

  

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