
グリーフケア研究所は、日本で初めてグリーフケアを専門とした教育研究機関として、2009年4月にJR西日本あんしん社会財団(JR西日本財団)の寄付協力を得て、聖トマス大学(兵庫県尼崎市)に設立されました。これは、西日本旅客鉄道株式会社及びJR西日本あんしん社会財団が、福知山線列車事故を踏まえた、社会に役立つ取り組みの一環として、事故の遺族の方々をはじめとした悲嘆者に対するグリーフケアを実践するため、公開講座「『悲嘆』について学ぶ」及び、グリーフケアの実践を遂行できる専門的な知識・援助技術を備えた人材を育成する人材養成講座に対して、進められたものです。
2010年4月より、日本グリーフケア研究所は、聖トマス大学から上智大学(東京都千代田区)に移管されました。聖トマス大学は2010年度4月以降の学生募集停止を決定しましたが、聖トマス大学と共通する教育理念を有し、"Men and Women for Others, with Others―他者のために、他者とともに生きる" という精神に基づき、人間の尊厳を確保するための教育研究をすすめる上智大学が、研究所創設の経緯、趣旨、活動の重要性に鑑み、研究所活動の継続に協力することになりました。
研究所の所在地は、上智大学大阪サテライトキャンパス内となります。
「人類の歴史は生と死の歴史」でもあります。「命ある」ものには必ず「死」が訪れます。また、多くの場合には自己の死を迎える前に、家族を看取るでしょう。その愛する家族や親しい人を喪失した後、体験する複雑な情緒的状態を「グリーフ(悲嘆)」と呼んでいますが、いずれ多くの人々は悲嘆者となるでしょう。
愛する人を亡くしグリーフに陥ることは正常な反応です。しかし、世界、または日本の社会の現状を見るとき、人命に関する様々な出来事、特に戦争、民族間の争い、災害、事故、事件、自死などで、無念な最後をとげる人々が多くいます。このような最後をとげられた方の遺族のグリーフは深刻な状況となる可能性があります。どのような死別形態であっても、遺族にとっては辛く複雑なグリーフ状態となることには変わりありませんが、今、特に「グリーフ」について人々の関心が高くなっています。
かつて、日本社会は大家族で生活が営まれ、地域社会でも濃厚な人間関係がありました。その中で、グリーフは癒されていました。しかし、現代日本の社会は核家族化が進行し、地域社会の人間関係も希薄なものとなってきています。そのような状況から「悲嘆者」はよりいっそう孤独となり、意識的に第三者からのケアを受ける必要が生じるようになりました。近年特に、意識的に「グリーフケアを受けたい」と望む人々を受け入れるシステムの必要が出てきていることに鑑み、「グリーフケアを専門的に研究」し、また「グリーフケアの実践を遂行」できる専門的な知識・援助技術を備えた人材を養成することを目的として本研究所を設立します。この設立により、日本社会でも「グリーフ」についての理解が深まり、その啓発となり、また直接的なグリーフケアを実践することにより、人々の心身の生活がより健康的になり、健全な社会を構築することに貢献できると考えています。
2007年10月より西日本旅客鉄道株式会社の寄付協力(当時)により開催している公開講座「『悲嘆』について学ぶ」を契機として、現代日本においては「グリーフ」についての関心が非常に高いことを認識させられました。
例えば:
1)講座への申し込みが定員300名に対して、申し込み開始初日で約2倍から3倍の応募がある
2)受講生が熱心で出席率が非常に高い
等の現実がありました。
この現象は通常稀なことであると考えます。期間中の講座に一括申し込みの公開講座の場合は、一般的に講座が進むにつれ出席率が下がる傾向にあります。しかし、本講座の出席率が変わらないことは、この講座に対する一般市民の関心が高いことを示しています。この市民の要望に応えるためにも、公開講座を継続し、更に、この講座を基礎として「グリーフケア・ボランティア活動」を始めるために、次のコースで学びたいとの要請に基づき、新たに人材養成講座を設置することで、より専門的に「グリーフケアの実践に携わる人材」の養成を可能にするために研究所を設立することになりました。
なお、寄付公開講座「『悲嘆』について学ぶ」は、2012年2月で終了いたしました。上智大学四谷キャンパスでは、引き続き「グリーフケア講座」を開講しています。